定期購読のみで実売30万部超え シニア女性誌「ハルメク」急成長の秘けつ
WWD:「ハルメク」は定期購読のみの販売だが、書店での販売を考えたことはなかったのか?
山岡:私の知る限りはないですね。というのも、会社のビジネスモデルが、読者の方のご自宅に届けることで成り立っているからです。そこには2つの側面があります。1つ目は、自宅に届けることでカタログやイベントのお知らせなどを同封できるということ。社内では“ハルメクワールド”と呼んでいるのですが、雑誌を入り口に入ってきてもらい、その中で買い物やイベントを楽しめる世界を実現することが大切で、これが書店ではなかなか実現できない。もう一つは、読者の声やデータです。書店を介さず、直接読者の方とつながることで、どこの誰が買っているのか、1冊残らず知ることができる。雑誌を読んだ後のアンケートでも、70代の方には響いたが、購読歴の浅い方には響かなかったな、といった分析が可能です。
WWD:雑誌の販売部数は現在も伸び続けているようだが、新型コロナウイルスの影響は?
山岡:おっしゃる通り、雑誌の読者数はコロナ禍でも伸び続けています。一方で広告の売り上げは、旅行系を筆頭に一時的に減りました。ただ、部数が非常に伸びていた点と、自粛期間中、エンタメが減っていたことで雑誌が熟読されたこともあり、広告へのレスポンスが高かったようで、広告収入も思ったよりは減りませんでした。イベントに関してはコロナ前は年間で200本ほど実施していましたが、コロナを受けて旅行会社と組んで実施していた旅行系は全て中止にし、勉強会や読者座談会などはオンラインに切り替えていきました。
WWD:読者の年齢上、イベントをオンラインに切り替えるのは難しかったのでは?
山岡:確かに、最初は本当に難航しました(笑)。読者座談会も、10名ほどが参加予定だったのに、参加できたのはたったの2名だったこともあります。ただ、続けるうちに読者の方がどこでつまずいているのかが分かってきて、私たちとしてもしっかりとサポートできるようになりました。今ではリアルで参加できなかった遠方の方なども参加できるようになるなど、活況を呈しています。読者の方の心境的にも、最初は難しかったけれど、出来た時の達成感や楽しみが大きいみたいです。