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辛坊治郎の「ヤバい麻薬」基礎講座…アッパー系・ダウナー系とは?

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SmartFLASH

 私、告白します。コカインを摂取したことがあるんです。あ、今、警察に通報しようと立ち上がった皆さん、話は最後まで聞いてください。  2019年も、多くの芸能人が薬物で逮捕されました。ただ最近の芸能人などの大麻や覚醒剤の乱用については、既視感があるというか「ああ、またかよ」という感じがないとはいえません。  もちろんこれって、ある種の感覚の麻痺ですから、けっして威張れた話じゃありませんが、覚醒剤で逮捕される人って日本国内で年間1万人にものぼりますから、確率的にそのなかに芸能人などの有名人が含まれていてもそんなに驚きません。  というわけで、ここでは麻薬類の基礎知識です。以前、ニュースをテレビで解説していて、意外と一般の皆さんは、大麻、覚醒剤、コカインなどの区別がついていないってことに気がつきました。  私、この分野けっこう得意です。じつは高校時代の同級生が昔、「麻薬Gメン」だったことがあり、彼から話を聞くうちにいろいろ興味が芽生え、一時期、本を読み漁ったことがあるんです。同級生の話によると、日本国内でもアヘン原料が取れるケシが観賞用植物として栽培されていたり、大麻が自生していたりするそうです。  また私は、2001年9月11日の同時多発テロ後、タリバン政権崩壊直後のアフガニスタンを訪れて広大なケシ畑を目撃し、タイ、ミャンマー、ラオス国境にある一大麻薬生産地帯「ゴールデントライアングル」を旅したこともあります。正しい知識は、乱用を防ぐための第一歩です。皆さん、麻薬の恐ろしさをよ~く知っておきましょう。 ■ペルーでは普通に飲まれているコカ茶  冒頭の話に戻ります。私、2018年の夏に世界遺産のマチュピチュを訪れるためにペルーに入国しました。世界中から観光客が押し寄せるマチュピチュ遺跡に入るためにはチケットの事前予約が必要で、そのとき私にとって初めての「パックツアー」参加となりました。そのほうがいろいろ便利だったんですね。  パックツアーですから、旅行会社とタイアップしている土産物屋に案内されます。多くの格安パック旅行には土産物屋がセットでついてきます。旅行客が土産物屋にお金を落とし、そのお金の一部が旅行代理店に還流されることによって格安ツアーが成立しているのは、誰もが知っている話でしょう。  で、案内されたのが街道筋の大きな土産物屋でした。入口のカウンターには、飲み放題のお茶が置いてあります。これがコカ茶だったんです。コカの葉をお茶のように乾燥させてお湯を注いだ飲み物で、ペルーでは普通に飲まれています。  さらにマチュピチュの遺跡巡りのガイドは、ポリ袋いっぱいのコカの葉を持ち歩いていて、ツアー参加者に「高山病の予防になるから口の中に入れて噛んだほうがいいよ」とすすめてくれます。  それどころか、町のスーパーでは誰でもコカ茶が買えますし、コカの成分入りの飴も普通に売られています。私はすすめられるままにコカ茶を飲んだりしましたから、体内にコカインを取り込んだのは間違いないです。  でもね、それで何か強烈な覚醒体験をしたかというと、それはまったくありません。つまり、濃縮精製されていないコカの葉自体には、そんなに強い薬物としての効果はないんですね。  でも皆さん、注意してください。いくら現地で普通に手に入るからといって、気軽な気持ちで日本に持ち込んだら厳罰に処せられます。葉一枚、飴一個でもダメです。日本だけじゃなく、アメリカでも重大犯罪です。  帰国時に、現地ガイドから「コカ茶、コカ飴、とにかくコカの成分の含まれる製品は絶対にペルーから持ち出さないでください」と、くどいくらいに言われました。これが、世界の常識です。  なぜ、そんなに国際社会は神経質になっているのか? それは、コカインの恐ろしさゆえです。コカの葉を大量に集め、ここからコカのアルカロイドだけを抽出して結晶にしたものが、薬物としてのコカインです。  植物のなかには、人間の精神に強い作用をもたらす物質を含むものがあります。これらの成分を総称して、「アルカロイド」といいます。アルカロイドを厳密に定義するとものすごく複雑な話になりますが、「辛坊流超簡単解説」では「精神に影響する植物由来のアルカリ性物質」としておきます。この定義の例外は、もちろんあります。  皆さんにいちばん馴染みのあるアルカロイドは、カフェインとニコチンでしょう。これらも多量に摂取すると命にかかわりますが、確実にもっと「ヤバい」アルカロイドはいくつもあります。  代表的なものが、ケシの実を原料にするアヘン、アヘンを原料とするモルヒネ、モルヒネ由来のヘロイン、コカの葉から作るコカイン、麻黄という植物のエフェドリン、穀類に寄生する菌類が作り出す物質起源のLSD、サボテンから抽出するメスカリンなどです。  さらに、天然植物が作り出すアルカロイドに似せてさまざまな薬物が人工的に作り出されてきました。覚醒剤はその代表です。ここに並べた名称、たとえば「アヘン」は、ケシの実に含まれる多様なアルカロイドの総称ですし、ヘロインは薬品メーカーの商品名だったりしますが、とりあえずこのような名称で裏社会に流通しています。  これら精神状態に影響を与える物質は、大きく「アッパー系」と「ダウナー系」に分類されることが多いです。アッパー系とは神経の興奮作用を持つもの、ダウナー系とは精神の抑制作用を持つものです。 ■「被害者のいない犯罪」と断定するのは危険  コカイン、覚醒剤は代表的な「アッパー系」の薬物で、ヘロイン、モルヒネ、大麻などは「ダウナー系」とされています。大麻の依存性、毒性については議論がありますが、それ以外の物質の毒性、危険性には疑いがありません。  アッパー系の薬物の場合、興奮状態や錯乱状態になって、自分や他人を傷つけることがありますし、ダウナー系でも中毒になって禁断症状が出たりすると、その苦しみから逃れるために強盗を働いて、薬物の購入資金を確保するなんてことに繋がります。  芸能人の薬物逮捕で、「強姦事件などと違って被害者がいる犯罪じゃないから、出演作品の公開などについてそんなに厳しくする必要がない」っていう意見がよく出ます。  私はこの議論を封印する必要はないと思いますが、アッパー系であれダウナー系であれ、薬物乱用が原因で窃盗、強盗、傷害、場合によったら殺人に至る可能性があるわけで、そんな事情を考慮せずに「被害者のいない犯罪」と断定するのは危険でしょう。  皆さん、植物が作り出すアルカロイドは、その植物が動物などに食べられないための防御成分といわれています。つまり「毒」なんです。その「毒」は、時として医師の厳重な管理下で薬として使われることがありますが、その「毒」だけを植物から取り出して、常人が日常的に摂取するなんて、そもそも自然の摂理に反しています。薬物乱用は自滅への一本道です。  ほんの軽い気持ちで吸い込んだ耳かき一杯の白い粉が、あなたからすべてを奪ってしまいます。絶対に手を出しちゃダメです。世界の麻薬地帯を渡り歩き、路上で息絶える数多くの中毒患者を目撃してきた私が言うんだから間違いありません。                  ※  以上、辛坊治郎氏の新刊『日本再生への羅針盤:この国の「ウイルス」を撲滅するにはどうしたらいいのか?』(光文社刊)より引用しました。

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