「スタート前の練習パットでのモットーは、パットでの不安を本番に持ちこまないということや」【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集⑰】
1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。
カップを狙う練習パットはしない
ーー「スタート前の練習パットでのモットーは、パットでの不安を本番に持ちこまないということや」 スタート前の練習では、ショット、パットにかかわらず、セルフコントロールを重要視しています。 なぜかといわれれば、ボクは絶対の自信、鋼鉄の意志というのをもちあわせていないからです。だから自分を勇気づけたり、なぐさめたり、時には自分を騙したりして少しでも優位に、有利に立とうとするセルフコントロールをするわけです。 この伝でいくと、ショットよりパットでの練習がセルフコントロールの必要はあると考えます。パットはスコアに直結しているので、精神的にモロに影響があり、その日のスコアを左右する要素になるからです。 ボクがスタート前のパットの練習では、不安を(パットの状態を)本番のラウンドに持ちこまんということを前提にしています。したがって自信をなくすことは避けるようにする。その方法としては、カップを狙うんやなく、自分の力加減で芝の転がりを点検するようにしています。 そうすれば、カップに入れたい意識からくるヘッドアップや、ヘッドがスムーズに出ていかない弊害が起きませんのや。そやから、ボールの転がりも自然によくなってくる。同時にいい感じのタッチが出てきて、ストロークも滑らかになり、芝の速さもつかめてくるでしょう。そういうスムーズな順回転のボールの転がりになったら、カップを狙うパットを始めればいいわけです。 最後の仕上げに、絶対に外さない50センチのパットを3発入れれば完了。落ち着いた気持ちでスタートできるはずです。
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