橋下氏「出直し市長選」で大阪都構想は進むの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
不信任決議がないと「解散」できず
仮に橋下氏が出直し選で勝って、彼の主張通り法定協の過半数を維新で占める改正ができたとしても(それもあやしい)結局は過半数を握っていない上に、今回の件でケンカしてしまった公明の支持が期待できなくなった大阪市議会で否決でしょう。ならば市長が議会を解散すればいいのでしょうけど、議会側が不信任を突きつけてこない限りできません。というかできたら出直し市長選などという面倒な手を使わなかったでしょう。
「リコール」に持ち込むのも難しく
また市長は議会の議決を突き返す再議権(一般に「拒否権」)があるものの、都構想はまだ議決どころか市議会の議案にすらなっていないので使えません。できるとしたら河村たかし名古屋市長が2010年8月、自ら仕掛けたような議会解散請求(リコール)の署名を集める方法があります。大阪市だと1か月間に約37万人も集めなければなりません。しかも有効得票総数の過半数が賛成して解散できます。その後の議会選挙で「維新」が過半数を取れる確証もありません。 要するに橋下市長は多大な署名を集めてリコールに持ち込む、または最終的に解散で応じてくるに決まっている市長に野党多数の市議会が不信任決議をするはずもなく、追い込まれた形で「協議会促進にYESかNOか」という難解な市長選で民意を少しでも引きつけようと考えているようです。 ちなみに大阪で特別区が作れても「大阪都」は名乗れません。大都市地域特別区設置法でも認めていないからです。「東京都=都」を前提にした法律が100以上あるので「都」を2つも3つも作ると大変な騒ぎになるからです。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】