ジャーナリストの田原総一朗氏が会見(全文1)全党がリベラル、保守党がない
今回の選挙戦はアメリカと北朝鮮との緊急事態をどうすればいいかが争点
さらに問題はこの日本を訪ねたあとにトランプさんは中国で習近平主席と会談する。いろんな情報がある。一番極端な情報は、もしかするとアメリカが北朝鮮に武力行使をする可能性がある。そのとき中国は黙って見ててくれ。いずれにしても今年の年末から来年にかけてアメリカと北朝鮮の間で、火を噴く危険性がある。防衛省の幹部も外務省の幹部も私にそう言っている。安倍首相も側近にそれが大変心配だと言っている。もしそういうことが起きれば日本にミサイルが飛んでくる可能性がある。 ところが、なぜか今回、解散するときに安倍さんはそのことを言わなかった。外務省幹部は私にとにかく年末から年明けにかけてアメリカが武力行使をする可能性がある。日本としてはそのために態勢をつくらなきゃいけない。そのためにできるだけ早く選挙をしたい。防衛省の幹部もそう言っている。安倍さん自身がこの側近たちにそのことをしきりに言っていると。ところが、なぜか解散の理由に安倍さんはそのことを言わなかった。 なぜ言わなかったの。外務省や防衛省の幹部に聞いた。官房長官にも聞いた。そしたら安倍さんの側近の1人が、それ言うと国民が非常に危険視する。まったく触れないほうがいいと言ったそうです。そこでくだらない消費税を2%上げると、こんなことを理由にした。こんなものは解散しなくても国会で論議すればいい。そのために野党は、大義なき解散。森友・加計隠しの解散だと。新聞やテレビもそう報じた。それはいいとして、この選挙戦で野党がまったくこの北朝鮮、アメリカ、緊張状態について論議しなかった。国民の生命を守るのは与党の仕事で俺たちは関係ないと、そういう姿勢。だから国民の多くはこんな選挙になんか関心が持てなかった。 もう1つ大きな問題。アメリカやヨーロッパの国々では選挙になると保守とリベラルが政権の座を争う。アメリカで言えば共和党が保守で、民主党がリベラル。保守は経済の面では自由競争。そして政府は社会のことにあまり介入しない、小さな政府。しかしそれをやっていると、貧富の格差がどんどん大きくなる。競争の負けて生活が苦しくなった人たちがどんどん増える。そこで次の選挙ではリベラルが勝つ。リベラルは生活が苦しくなった人々を救うために、社会保障、福祉、がんがん、これに金を投入する。すると財政が悪化する。そこで次の選挙では保守が勝つ。保守がいいか、リベラルがいいかということではなくて、言ってみりゃ保守とリベラが代わり番こに政権についている。これが世界の状況。 そこで、日本では自民党は保守党です。ところが自民党が経済面ではリベラル。ばらまき政策。だから1,000兆も借金ができた。さらに民主党の野田政権のときに、消費税を10%にすると約束した。ところが自民党の安倍政権は、それを先延ばし、先延ばしにしてきた。つまり自民党は世界で言えばリベラル。今回その安倍首相が、2%消費税を上げると言う。すると希望の党の小池さんはじめ全野党が反対。つまり、日本には保守はない。保守党がない。 かつて民主党という党が政権を取った。自民党は密室談合政治だと。俺たちは、開かれた政党だ。政治の形が大きく変わると宣言した。ところが実態は何も変わらなかった。だが、自民党が政権を取っている期間が長いので、割に政治がうまい、ずるいと言っている。民主党は正直で下手。この違いだけがでてきた。 さて2つ。つまり今回の選挙戦では一番肝心の、アメリカと北朝鮮との緊急事態、どうすればいいのか、一切これが論争にならない。それからこの消費税の問題でも、全党がつまりリベラル。保守がないことが、このことをなぜか新聞もテレビもまったく疑問視しない。とても不思議な国だと思う。以上です。 司会:(英語)。どうぞ。