ウルトラマンの答えに感じた人間の卑しさと愛おしさ 『シン・ウルトラマン』斎藤工インタビュー
公開から約1カ月が経ってMX4D、4DX、DOLBY CINEMAでの上映がスタートし、いまだに勢いが衰えない映画『シン・ウルトラマン』。人間であり外星人でもある “ウルトラマンになる男” 神永新二を見事に表現したのが、俳優業に限らず多方面で才能の発揮する斎藤工さんだ。公開初日を迎えた斎藤さんにインタビューを敢行し、神永や『シン・ウルトラマン』への想いを伺った。 【関連画像】斎藤工さん撮り下ろし写真や『シン・ウルトラマン』場面カットを見る(写真27点) ◆幼少期に回帰させる映像体験◆ ――2019年の発表から約3年が経ちましたが、完成した映像をご覧になった感想はいかがですか? 斎藤 台本を読んで撮影現場を経た僕たちは、どうしても答え合わせみたいな見方になってしまって、俯瞰では全く観られないんです。でも、今作はそれ以上に作品が持つうねりのようなものに飲み込まれて、内容を分析できないくらい映像体験の喜びが覆い包んでくれる感覚があって。今朝もプライベートで観てきたのですが、幼少期の映画体験をふたたび味わったような気持ちになりました。 ――数多くのカメラを使用し、出演俳優がスマホのカメラを構えながら演技をしたことも話題になりました。 斎藤 以前の『シン・ゴジラ』でもスマホを撮影に使用されていましたが、スマホが持つカメラとしての可能性を強く感じました。スマホは従来のカメラよりも機動力が高く、これまでは置けなかったところにカメラが構えられることが素晴らしいところだと思っていて。次の僕の監督作は全編スマホで撮ろうと考えているので、今作の現場を経験した影響は受けていると思います。 ――今作の魅力の一つとして、宮内國郎さんが手がけた『ウルトラQ』『ウルトラマン』の劇伴、鷺巣詩郎さんが作曲した新曲などの音楽が挙げられます。 斎藤 宮内さんの音楽も素晴らしいのですが、鷺巣さんの音楽がメチャクチャカッコいいと思いましたね。特にメフィラス戦の音楽(『An Out of Body State <体外離脱>』)のロックっぽくなるところはさすがだなと。改めて鷺巣さんと庵野・樋口作品の相性の良さを感じました。今作を観た方の感想の中には「ドラマシリーズで観たい」という声もあって。その気持ちは痛いほどわかりますし、『ウルトラマン』を愛しているからこその意見だと思うんです。でも、僕は映画の要素の50%は音だと思っているので、音を楽しむという意味では、映画として劇場で上映したことが正解だったのではないでしょうか。 ◆特撮が持つ感情移入させる力◆ ――今作ではフラッシュを焚いて撮影した変身シーンに代表される昔ながらの特撮、ウルトラマンのバトルシーンのような最新のVFXの両方が駆使されていました。特撮、VFXに関わるシーンの撮影で記憶に残っていることはありますか? 斎藤 僕たち俳優部としては、「ここからは特撮パート」と明確に区別されていた印象はなくて。ただ、企画書の段階で書かれていた “空想特撮映画” というクレジットに込めたこだわりや想いは、完成した映像を観たときに強く実感しました。特撮という人の存在を感じさせる伝統的な手法を使ったからこそ、感情移入するフックが生まれたのではないでしょうか。 ――あえてアナログな手法を用いたことに意味があると。 斎藤 あくまで僕個人の感覚ですが、VFXには感情移入がしづらいんですよ。「すごい映像を観た」という経験にはなっても、「映画を観た」という実感は得づらくて。円谷英二さんたちがいかにして観る人を驚かせ、楽しませるのかを創意工夫してきた特撮の歴史は、日本の映像業界が誇れる遺産だと思います。今作はそんな伝統的な特撮と、それを進化させたVFXなどの技術を同調させた、シンボリックな映像体験が味わえる作品になっているのではないかと。 ――もし特撮映画を撮影する機会が訪れたら、どういった作品を作ってみたいですか? 斎藤 今作の現場を経験して、特撮は僕のような素地がない人間が制作側として関わってはいけないと感じました。だから、自分が制作する側になったとしたら、餅は餅屋ではないですけど、樋口さんに相談すると思います。 (C)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ