ニワトリの閉じ込め飼育続ける日本 採卵農場で女性従業員が見た“残酷”
鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の元代表が、吉川貴盛・元農相(70)=自民=らに多額の現金を提供していた疑惑に注目が集まっている。背景には、ニワトリを狭いスペースに閉じ込める「バタリーケージ」を維持したい業界団体の思惑がある。 国は、国際基準に合わせ、適切な飼育基準の策定を進めようとしていた。これに対し業界は「生産者に大きな打撃を与える」「安価な卵を供給できなくなる」などと猛反発。基準を骨抜きにしようとしたとみられる。 “政治家と業界の癒着”の構図の先にある問題の本質は、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」がなかなか定着してこなかった日本の畜産文化だ。動物の本能を無視した画一的かつ高密度環境の「バタリーケージ」飼育は、「工場畜産」と批判されている。日本ではいまだに9割以上の採卵鶏農場が使っているからだ。一方、欧州はすでにバタリーケージを廃止した。 動物福祉の観点から見れば、日本のニワトリたちは、残酷な扱いを受けている。昨冬、東日本のファームで働いた経験がある40代の女性=東京在住=に、衝撃的な実態について語ってもらった。(構成/共同通信=真下周)。
▽粉じんで「マスクがないと居られない!」 敷地内には、のっぺりした窓のない工場のような大きな建物がずらりと並んでいました。2階建ての窓がない建物。鶏舎の中に入って初めに思ったのは「マスクがないと居られない!」でした。バタリーケージに収容されたおびただしい数のニワトリたち。その粉じんが鶏舎の中に充満していたからです。窓がなく換気扇だけで空気を循環させている。こんなにもほこりっぽいのかと驚きました。ニワトリたちが出す細かい脂粉や羽毛、粉じん。息がしにくいほどで、マスクを外すと顔がかゆくなりました。 ニワトリは卵からひなにかえって、卵を産める成鶏になる120日齢ごろまで「育雛(いくすう)農場」で飼育されてから、採卵農場にやってきます。育雛農場でもバタリーケージ飼いだそうです。採卵農場では卵を産めなくなる生後600日齢ほどまで過ごし、最後は出荷され、ミンチ肉などになります。 ーニワトリの祖先は赤色野鶏だと言われているが、産む卵の数は年間十数個ほどにすぎない。だが家畜化して以降、品種改良が重ねられ、今や採卵鶏の産む数は約300個。多い産卵数は、ニワトリの体の代謝に負担をかけ、さまざまな疾患でニワトリを苦しめているとされる。