こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】ただのOEM車ではなかったスバルらしい7シーターモデル[トラヴィック]は失敗作だった!?
■アウトバーンの超高速走行を想定した高度な安全性
大切な人を乗せるクルマとして安全性の追求にも余念がない。アクテイブセーフティでは、急制動時の安定性を高める4センサー4チャンネルABSの採用をはじめ、乗車人数や積載量により前後輪の加重割合が変化しても、常に後輪の制動力を最適に制御するEBDも備えている。さらに、滑りやすい路面でブレーキとエンジン出力を制御し、発進性能や走行安定性の確保に効果をもたらす、トラクションコントロールシステムも採用されていた。 万が一の衝突に対する備えも万全だ。トラヴィックには欧州基準の衝突安全性能が与えられており、各方面からの衝撃を効率よく吸収するセイフティ構造ボディの採用。乗員への衝撃を和らげる低圧タイプで大容量のデュアルSRSエアバッグを装備。全席に上下調整式ヘッドレストを備え、上級グレードであるLパッケージの運転席と助手席ヘッドレストには、追突時に上方前方に動いて頚部への衝撃を軽減するフロントアクティブヘッドレストが装備されていた。 このほかにも、前面衝突時にペダルが衝撃を吸収して運転手の下肢損傷を低減するセイフティペダル、肩ベルトと腰ベルトの双方から身体を拘束するベルトキャッチ式シートベルトプリテンショナー、衝撃を感知すると各ドアロックを解除するドアロック自動解除システムなどの機能が盛り込まれている。 こうした機能は高速移動を日常とするドイツ車ならではのものであり、ドイツ的な積極安全の考え方を継承したトラヴィックの安全性はミニバンクラスのなかでもトップレベルであったことは間違いない。 当時はまだミニバンというジャンルが成熟過程にあり、特に純国産モデルは居住性や実用性について過剰とも思えるほどの機能を与え、他車を出し抜くことに躍起になっていた。しかしトラヴィックは、ミニバン特有の機能についてはあえてシンプルであることに徹した感があり、それよりも走りのよさにこだわることで他のミニバンとは一線を画していた。 とはいえ、2000年代初頭に登場したミニバンのシートアレンジや収納スペースは、たとえそれが合理的ではなく、使い道がよくわからなくても、実用性の権化であるミニバンには必要なものであり、ユーザーに与えるインパクトも大きかった。 それゆえに必要最低限の機能にこだわったトラヴィックのシンプルさはデビュー当初こそ評価されたが、競合車との比較では物足りなさが強調されるとともに、欧州製ミニバンの国内ニーズに対する適合性が低いと評価されてしまう。ベースグレードが199万円、上級グレードのLパッケージで234万円という価格の安さだけで競合車に対抗できるわけもなく、登場からわずか3年で新車市場から姿を消してしまう。 ミニバンとして能力には不満がないうえに、ドイツのアウトバーンで超高速走行もこなせるという走りのよさを持つなど、トラヴィックはそれまでの国産ミニバンとはひと味違う、まさにマニアを唸らせるスバルらしい玄人好みのクルマだった。
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