地区優勝し、美酒を浴びせる大谷（代表撮影）

＜ドジャース7－2パドレス＞◇26日（日本時間27日）◇ドジャースタジアム 　【ロサンゼルス（米カリフォルニア州）26日（日本時間27日）＝斎藤庸裕、斎藤直樹】ドジャース大谷翔平投手（30）が、悲願の地区優勝を手にした。パドレス戦に「1番DH」で出場し、5打数3安打1打点。同点の7回、V打となる右前適時打をマークした。昨年12月、7億ドル（当時のレートで約1015億円）の10年契約でド軍に移籍。開幕から紆余（うよ）曲折がありながら、家族や仲間とともに戦い抜いた。メジャー7年目で初のシャンパンファイトを経験。残り3試合を戦い、初めてポストシーズン（PS）の舞台に立つ。 【写真】山本由伸に美酒を浴びせる笑顔の大谷翔平 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　やっと、たどり着いた。大谷が笑って、はしゃいだ。7年目で初のシャンパンファイト。優勝でしか味わえない美酒を、全身で浴びた。目が赤くなるのも、この日ばかりは楽しい。「もうずっとやりたいなと思ってきたので、本当に今日できて良かったなというか、幸せな気持ちです」。クラブハウスで、フィールド上で、ともに戦った仲間たちと喜びを分かち合った。 　本拠地で決める－。思いが通じた。同点の7回1死一、二塁、5万2433人のファンが一斉に立ち上がる。高まる期待を背に、大谷はバットを振った。クリーンヒットではない、泥臭い打球のゴロが右前に抜けた。二塁走者の生還を見て、力強く拳を握った。地鳴りのように響く、心地よい大歓声。スタジアムに充満する一体感が身に染みた。「僕らももちろん特別ですし、ファンの人が何より特別じゃないかなと。そういう瞬間をホームで迎えることができて、ファンの人たちにとっても、僕たちにとっても最高だった」。悲願だった初Vの余韻に浸った。 　この1年、劇的に事が動いた。2度目の右肘手術、スポーツ史上最高額での移籍、結婚、元通訳との離別…。驚くほど切り替え上手な男が、開幕当初は思い悩んだ。睡眠不足がパフォーマンスにも影響し、自分らしさを見失いかけた。支えてくれたのは、真美子夫人や愛犬デコピンはもちろん、ロバーツ監督や同僚、チームスタッフの笑顔だった。「冗談を言い合える雰囲気は、僕にとっては楽かなと」。苦しかった時期も、クスッと笑い合えた。変わらないファンの大声援も力になり、救われた。 　そして、レギュラーシーズンの最後には思いっきり笑えた。優勝を決めた試合後、感謝を込めるかのように同僚、チームスタッフ1人1人と抱き合った。「地区のライバルですし、強く、素晴らしいチーム。そういうチームを相手に今日みたいな試合ができたのは、全員で勝ち取った勝利」。満面の笑みを、満員で埋まったファンにも届けた。 　過去6年間、在籍したエンゼルスでは勝ちに恵まれなかった。感謝を胸に、移籍1年目の新天地で、1つの大きな目標に到達した。だが、ここで終われない。10月にはPSの舞台に立つ。「本当に全員いい仕事をして、いいゲームだと思うので。ポストシーズンに向けてまだまだ頑張っていきたい」。地区V直前の9回表、ベンチに座り、タブレットを手に映像を見返す姿もあった。残り3試合。打撃3冠も視界に捉える。「気を緩めることなく、最後までまず駆け抜けたい」。24年シーズンの大谷翔平物語は、まだ続きがある。 　◆地区優勝決定試合で活躍した日本選手　大谷のように地区V決定試合で勝利打点をマークしたのは、09年松井秀（ヤンキース）だけ。松井秀は9月27日レッドソックス戦で6回に斎藤から逆転の2点適時打を放った。松井秀は04年9月30日ツインズ戦でも同点本塁打を打っている。投手では95年野茂（ドジャース）07年松坂（レッドソックス）12年黒田（ヤンキース）19年田中（ヤンキース）が先発勝利。01年佐々木（マリナーズ）13年上原（レッドソックス）は最後に投げる「胴上げ投手」となった。