被災地再生に「自伐型林業」 輪島でモデル林づくりスタート 災害に強い森づくりに期待
ラボでは、茅葺庵の南西に広がる森を「モデル林」として整備しようと所有者を調べ、環境にやさしい森づくりを目的とした整備を認めてもらう協定書を関係者と締結。尾垣さんは「研修などを通じて関わってくれる人を増やし、森や山に関心を持つ人が増えることで、地域の再生につながれば」と話した。
■林業従事者4・4万人 増える「管理できない森林」
わが国は国土の7割を森林が占める森林大国だが、昭和30年に94・5%だった木材自給率は昨年で42・9%。39年の木材輸入全面自由化で安価で大量供給が可能な外国材の需要が高まって国産材価格が下落、林業が衰退したことが大きい。新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻で輸入量が激減、木材価格の高騰「ウッドショック」も起きた。55年に約14万6千人いた林業従事者は、令和2年には3分の1未満の約4万4千人にまで減少、人手不足が森林荒廃の一因ともなっており、従事者の拡大は喫緊の課題だ。
国は林業の成長産業化と森林資源の適切な保全を目指し、平成31年4月から「森林経営管理制度」をスタート。森林所有者が適切な管理を実施できない場合は市町村に経営管理を委託させている。林野庁によると、制度開始から5年で約103万ヘクタールについて所有者の意向調査を行ったところ、約4割が委託を希望し、うち約半数で森林整備につながる動きがあったという。
自伐型林業は10年ほど前に「持続可能な小さな林業」として注目を集め、全国に広がっている。NPO法人「自伐型林業推進協会」(東京)によると、現在は51自治体が推進している。(木村さやか)
■「初期投資少なく災害起こしにくい」九州大大学院農学研究院・佐藤宣子教授(森林政策学)
自伐林業は、小型機械を使って間伐を主体に行う林業で、国内では森林所有者が、家族の労働力を使って行うような小規模なものを指している。近年では林業の技術を身に付けた人が、高齢者や集落が所有する管理が行き届いていない山などで行う「自伐型」という形も出てきている。大規模に皆伐する林業に比べて小型な重機で済むことや、初期投資が少なく幅広い就労機会があることなどがメリットとなる。