被災地再生に「自伐型林業」 輪島でモデル林づくりスタート 災害に強い森づくりに期待
能登半島地震で甚大な被害が出た石川県輪島市で、小規模な間伐を繰り返して森を育てる「自伐(じばつ)型林業」の取り組みが始まった。そもそも土砂災害の多い日本だが、国内で主流となっている樹木を一斉に切り出す「皆伐(かいばつ)」はそのリスクを高める恐れが指摘される一方で、自伐型は森林の荒廃を防ぎ、災害に強い森づくりにつながると期待されている。熊本など豪雨災害の被災地でも導入が進んでおり、能登での展開が注目される。 【グラフィック】従来型と自伐型林業の違い 11月5日朝。石川県輪島市三井(みい)の古民家「茅葺庵(かやぶきあん)」に拠点を置くNPO「のと復耕ラボ」で、「三井の森づくり勉強会」が始まった。講師を務めたのは、福井市で自伐型林業の研修プログラム「自伐型林業大学校」を運営する一般社団法人「ふくい美山きときとき隊」代表理事の宮田香司さん(53)。森を管理するための道づくりなどを学ぶ実践的な勉強会は8日まで4日間開催され、石川県内外からのべ50人が参加した。 能登半島は、その豊かな農林漁村の原風景が「能登の里山里海」として平成23年、わが国で初めて世界農業遺産に認定された。だが、象徴的存在である白米(しろよね)千枚田(輪島市)は地震に続く豪雨で斜面が複数箇所で崩れた。少子高齢化が進む中、里山里海をいかに保全して次代に継承させるかは大きな課題だ。 震災後、被災者らで結成されたラボは、地域再生を目指して3千人超のボランティアを受け入れるとともに、倒壊した古民家の古材活用に取り組むなど、復旧復興に止まらない活動を展開してきた。森づくりはその一環で、ラボ副代表の尾垣吉彦さん(37)が宮田さんのもとでかねてノウハウを学んでいた。 従来の林業は、約50年周期で広範囲に樹木を切り出す「皆伐」が主流だが、自伐型では適度な間伐を繰り返して良質な樹を育てる。そのために重要なのが、手軽に山に入れる小さな道を高密に張り巡らせること。これにより、1人で軽トラックに乗っての間伐、木材搬出も可能になる。低投資・コストで持続的に収入が得られるのが従来型との大きな違いだ。 3トンの小型ユンボで敷設する小さな作業道は、幅2・5メートルが基本。山側の切り高は1・4メートル程度に抑えて、尾根を縫うように造られる。四輪駆動車で上がれる程度の勾配にとどめ、排水処理も施す。日常的な森の手入れが可能になるとともに、土砂災害防止や獣害の抑止にもつながるという。