【WRCとともに歩んだ進化】三菱ランサー・エボリューションVI TMEとX FQ440 MR 後編
究極のランエボといえるVIのTME
text:Jack Phillips(ジャック・フィリップス) photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) ランサー・エボリューションVI トミ・マキネン・エディション(TME)のエンジンも初代と同じ2.0Lの4G63型。日本の自主規制によって最高出力は280psに抑えられている。究極のランエボといっていい。 【写真】ラリーで鍛えた 三菱ランサー・エボリューションVIとXを比較 (43枚) 同時に英国40台限定のFQ440 MRも、異なる理由で究極のランエボだといえる。ランサーの最後を守った砦として、過去最強で最速のランエボだ。 一般的には、英国での注目度が高いのはランエボVI TMEの方。ランエボ6.5とみなすファンも居るようだ。 プロジェクトを率いていた三菱の辻村千秋チーフエンジニアによれば、トミ・マキネン・エディションは開発側のアイデアではなかったという。「セールス・マーケティング側からの提案でした」 「ステッカーや外装など、見た目的な違いを施したクルマを考えていたようです。しかし、われわれはクルマをアップデートするチャンスだと考えたんです」。と以前インタビューに答えている。 TMEで目につくのは、やはりボディのストライプ・ステッカーではある。だがエンジンには、チタン合金タービンを採用した小径のターボが組み合わされている。車高はさらに10mm低く、大砲のように太いエグゾーストをぶら下げ、いかにも速そうに見える。 過度にアグレッシブではないが、デザインにはしっかり目的がある。赤いキャリパーが目印だが、純正の白いエンケイ製ホイールを履いているTMEは、非常に珍しい。 トランクリッドのウイングも巨大。しっかり機能を備えていて、邪魔になるような見た目自慢の部品ではない。
WRCを戦わなかったランエボX
一方のランエボXの容姿は、ランエボVIとは対照的。アグレッシブで派手で、どこか機能的には見えない。優雅さも漂うTMEとは違い、力技でエボを構成しているように感じられる。 2005年、三菱はラリープログラムからの撤退を発表した。それ以降のランエボは、FIAの厳しいレギュレーションに従う必要もなくなった。VからVIへ進化した時のように、ライバルとの戦いへ備える必要もなくなった。 結果としてランエボXは、三菱のポストWRC時代に誕生した唯一のランエボとなり、モデルライフも長かった。ランエボXが発表されたのは2007年。今回のFQ440 MRは、それから8年後に英国市場へ出ている。 その間、何台かのスペシャルモデルが発表され、自主規制に捕らわれていた馬力が開放されていった。スタイリングは、徐々に煮詰められていった。 ランエボVIの存在が、ランエボXへ与えられたデザインの文脈を整えてくれる。先代までの流れをくみ、つながりも感じさせる。一方でラリーで暴れまくった無法ぶりは、青年が大人になったかのように影を潜めている。 時代の経過を感じずにはいられない。ランエボXが登場する頃には、ラリーでも公道でも、ホットハッチが主役へと移っていた。ラリーのトップカテゴリーでの戦いとの結びつきは、ランサーから離れていった。 トミ・マキネンもしばらく存在感を失っていた。今は、トヨタのラリープログラムを率いているが。