侍世界一の地で垣間見た「人間・大谷」 過去の栄光には執着見せずも「一生忘れない」2度の栄光
◇ナ・リーグ ドジャース20-3マーリンズ(2024年9月19日 マイアミ) 【ヤナギタイムズ】日本ハム時代の13年12月から大谷を本格取材し、TBS系情報番組「ひるおび」、「ゴゴスマ」などに随時出演する本紙MLB担当・柳原直之記者の連載コラム「ヤナギタイムズ」。今回は試合後のインタビューで垣間見えた大谷の人間性などについてレポートした。 不思議な導きを感じた。ローンデポ・パークの本塁側メディアゲートを入って左。大谷の会見場は、23年3月のWBC決勝・米国戦後にMVPに選ばれた大谷に用意された会見場と同じ場所だった。 3連戦初戦の17日は私にもWBC以来、546日ぶりだった同球場。同日の試合後に大谷に懐かしさを尋ねると「ベンチは逆なので。あまり…そこまで一緒の感じはしなかった」と素っ気なかった。確かに当時は準決勝、決勝ともに三塁側ベンチで、今回は一塁側。別の記者も同じ質問を重ねたが、同じ答え。帰りの通路を歩きながら「懐かしいけどなあ…」と記者仲間と疑問をぶつけ合った。 大谷は変えられない過去には執着せず、変えられる現在、未来に集中する。今は地区優勝へ全力を注ぐ時期。日本が世界一を奪還したWBCは輝かしい思い出だが、あえて振り返ることはしなかったのだろうと推察する。そんな大谷が会見で同球場で2度目の栄光をつかんだことに「一生忘れない」、「自分のプレーしてきた球場の中で好きな球場の一つになった」などと語り、ユニコーン(伝説上の動物)とも例えられる大谷の人間らしさがわずかにのぞいた。 スタンドも騒々しかった。この日の3本塁打の行方は杉浦大介通信員が取材した。50号を捕った高校生のグレグ・マトゥス君は、別の男性に本塁打球を強奪され「これが初めての野球観戦だった。僕の18度目の誕生日でもあったのに」と“半泣き”状態だったという。3本塁打ともキャッチしたファンは、記念球を巡る混乱を警戒してセキュリティー担当によって関係者口に連れて行かれた。“ハンター”たちの熱気にも満ちていたという。