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漫画家たがわ靖之 丸めた鼻くそを綿に包んで保管していた【牛次郎 流れ流され80年】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【牛次郎 流れ流され80年】#37  牛次郎はかつて、東京の青山に「ダックスハウス」という編集・出版プロダクションを持っていた。そこには多くの漫画家や作家の卵たちがたむろしていた。  漫画家のたがわ靖之もそのひとり。「別冊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載されていたベストセラー漫画「包丁無宿」のほか、牛次郎原作の「ダンプ野郎」などの作品も手掛けた。 「彼もおかしな男でね。あるとき、大事そうに綿に包んだ勾玉みたいなものを取り出して、『これいいでしょ、光り具合が』なんて言ってきたんだよ。直径1センチ近くあったかな。すげえ大きくて、まるでルビーかなんかみたい。『ここまでするの大変でしたよ』って自慢するから、ちょっと触ろうとしたら、『あっ、やめた方がいいですよ』って止められた。これはいったい何なんだって聞いたら、鼻くそだって言うんだよ。ええっ~て、たまげたね」  たがわは20年前、53歳で亡くなった。 「自宅で死んでいるところを発見されてね。早死にだよな~。聞いた時は驚いたよ」 ■漫画家の8割はうつ  漫画家は実社会とあまり関わらないで生きていることが多い。若くしてデビューしたり、先輩漫画家のアシスタントとして働いたりしているので、組織の中にいて雑多な人たちと交わる経験に欠ける。それが個性的でユニークな作品を生み出すこともあれば、精神的なもろさを抱えたままでドロップアウトする事態を招くこともあるという。 「組織の中で理不尽な目にも遭って、精神的に鍛えられるってことがない。せいぜい居酒屋とかでアルバイトをするぐらいだろ? 狭い社会に閉じこもって身近な世界がすべてになっちゃうから、あがいてもどうしようもなくて、まいってしまうことが多いんだよ。それでうつになる。漫画家の8割ぐらいはそうじゃねえのかな。もともとひとりでコツコツと絵を描くのが好きなんだから、性格的にもうつになりやすいんだろうな。それでたまにすっとんきょうなヤツも出てくるんだよ。俺だってサラリーマン経験といえば、『西陣』での3年間ぐらいしかないよ。それでも毎日、新井薬師から中野まで満員のバスに揺られて通勤してたからね。電車の混雑もすごいけど、バスのそれにはかなわないと思うよ。ありゃ地獄だ。とにかく自分の身を守るのに精いっぱいで、まんじゅうを持ってたら確実にあんこが出ちゃうね。それなのに、あんな中で痴漢をするヤツがいるっていうんだからね。ここでやるのかい? って感心するよ」 「はなまるマーケット」や「おしゃれカンケイ」など数多くの人気番組を手掛け、47歳で亡くなった放送作家・腰山一生も、ダックスハウスに出入りしていた。腰山はテレビ朝日のアナウンサーだった古舘伊知郎(65)の独立をサポートし、芸能・制作プロダクション「古舘プロジェクト」を立ち上げた創設メンバー。同社長(現会長)の佐藤孝は、牛次郎がダックスハウスの社長に据えた人物だった。 =敬称略(つづく) (取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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