『FE紋章の謎』前作は仲間だったのに! 戦友と刃を交える、非情な人間ドラマに驚嘆
今でもSwitchでプレイ可能な『ファイアーエムブレム 紋章の謎』
読者の方々は年末年始をどのように過ごされましたか? 例年なら帰省や旅行等の外出で賑わう人々も多かったと思いますが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにも、自宅でのんびり家族と年越しを迎える方が増えていたように思います。 【画像】あなたの好きな「FE」は? 筆者もそんな”自宅でゆっくり派”のひとり。年末から元日にかけ、思いつくままにアレコレとゲーム作品に手を伸ばしていました。とりわけ最も長く遊んだのは、『スーパーファミコン Nintendo Switch Online』対象タイトルにラインナップされていた『ファイアーエムブレム 紋章の謎』(以下、紋章の謎)。筆者は数年ぶりに本作をプレイしましたが、発売から25年以上を経てもなお、現代に通用する魅力を再確認しました。
「暗黒戦争」と「英雄戦争」を描く大ボリューム作品
スーパーファミコン用ソフト『紋章の謎』がリリースされたのは1994年1月21日。ファミリーコンピュータ用ソフトの前作『ファイアーエムブレム外伝』(以下、外伝)より約2年後の出来事です。つまり「ファイアーエムブレム」(以下、FE)シリーズ3作目にあたるわけですが、より密接に関わっていたのは『外伝』ではなく、1990年発売の第1作目『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』(以下、暗黒竜と光の剣)のほうでした。 というのも、『紋章の謎』は2部構成・40ステージ以上を誇るなかなかの長編。前編に第1作目の物語をダイジェスト的に描いた「暗黒戦争編」、後編には『暗黒竜と光の剣』の直後に勃発した戦乱を紐解く「英雄戦争編」が収録されています。データ量が数十ギガに及ぶ大作は今でこそ珍しくありませんが、24メガに実質2タイトルを収録した本作は、27年前においてインパクトも大きかったのではないでしょうか。 暗黒戦争編の主軸は、アリティア国の王子「マルス」の元に集った数々の戦士たちと地竜王「メディウス」の戦い。続く英雄戦争編では、戦後の復興に勤しむマルスの眼前に、かつての戦友たちが立ちはだかるシビアな展開が待ち受けています。 なかでも序盤から印象強いのは、アカネイア神聖帝国を自ら立ち上げた「ハーディン」。暗黒戦争編でマルスを支えた彼は、かねてより心を寄せていたアカネイア王女「ニーナ」と結ばれるものの、幾度もの事情が重なって精神が衰弱。心が弱りきっていたところを黒幕に利用され、強大な軍事力で人命を虐げる暴君へと変貌してしまうのです。そうした立ち居振る舞いに加えて顔グラフィックも変化。彼のシンボルであるターバンは取り外され、世界を全て憎むが如く、両目を真赤に染めています。 上述のハーディンを皮切りとし、再び復活を遂げた「メディウス」と決着をつける。これが『紋章の謎』における英雄戦争編のメインストーリーです。光が闇を滅ぼして一件落着……ではなく、”背中を預けあった者同士が戦わなければならない運命”にクローズアップしている点がポイント。「FE」シリーズ伝統とも言える人間ドラマ(群像劇)は、シリーズ3作目の時点で綿密に練り込まれていたように思えます。