映画「鬼ガール!!」“田舎嫌い”の瀧川元気監督が地元・奥河内で映画を撮った理由
現在大阪にて先行公開中、10月16日より順次全国公開する映画「鬼ガール!!」。井頭愛海が映画初主演を務め、高校生のフレッシュな学校生活を描いた王道青春ストーリーだ(ヒロインが“鬼”であることを除けば…)。 【写真を見る】桜田ひよりら注目の若手キャストが集結! そんな本作は、大阪府河内長野市協力のもと、市内全域でロケを行い地域の魅力も詰まった“地方創生ムービー”。メガホンをとった瀧川元気監督は河内長野出身で、立命館大学を卒業後は大阪出身の三池崇史監督に師事し、映画やドラマの助監督のほか志賀・奈良でのロケーションコーディネートなども行ってきた。 そんな瀧川監督が本作に込めた思いを、プロダクションノートから読み取ってみたい。 ■ ちりばめられた奥河内の観光名所 映画「鬼ガール!!」は、今も鬼伝説が残る大阪の秘境・奥河内を舞台に、主人公・ももかが“映画作り”にかける日々を描く青春物語。 鬼族の血をひく“鬼”であることにコンプレックスを持ちながらも、憧れの高校生活に奮闘するももかは、大阪府出身で2016年度後期のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」でヒロインの娘・さくらを演じた井頭愛海が務める。 そのほか、ももかの幼なじみ・蒼月蓮役に板垣瑞生、ももかの恋のお相手となる先輩・神宮寺岬役に上村海成。学校イチの美女・松丸星愛姫役で桜田ひよりが出演する。ほか、吉田美月喜、曽野舜太、深尾あむ、末次寿樹らフレッシュな若手キャストたちが集結する。 劇中では、日本の棚田百選にも選ばれた下赤坂の棚田や情緒ある“鬼住橋”、中世文化遺産でもある金剛寺など“中世に出会えるまち”河内長野のどこかなつかしい風景がふんだんに登場する。 そんな「鬼ガール!!」。瀧川監督のあふれる地元愛が込められている…と思いきや、瀧川監督は「僕は田舎が嫌いで河内長野を飛び出した」の衝撃告白。「田舎特有の空気もそうだが、『こんな田舎で夢持ってたって東京も遠いし、無理やって』って言われることも1度や2度ではなかった。だから、お盆と正月に最小限帰省し、誰かと会うことも会いたいとも思わず、東京に戻っていた」と続く。 だが、“嫌い”のエネルギーは、矢印の方向さえ変わればそのまま“好き”に転じるもの。広島での地方創生ムービー「恋のしずく」制作時に掛けられた「自分の故郷大事にできんやつがこの先もほかの街で地方創生ムービーやるんか?」の一言をきっかけに、瀧川監督はみずからの地元・河内長野に向き合うことを決心した。 ■ 「『奥河内』から全国へ、そして世界へ」 そしてその時から、地元に対して持っていた“嫌い”のエネルギーは大きくその方向を変えていった。「世界が認める日本を代表する都市である大阪。しかし反面、大阪市街についての観光数減少や人口減少についての課題が存在し、僕のふるさとは、消滅都市の候補地になっていることに衝撃を受けた」――調べるにつれ、わかってきたふるさとの実態。 「大阪の中で自然が豊かであることや、農業が盛んであることはあまり知られていないことにも気づいた」と瀧川監督。「地域の魅力を存分に生かして、『奥河内』から全国へ、そして世界へ。地方と全国、世界をダイレクトにつなぐ、グローカルな映画を作りたい」――そんな思いで、「鬼ガール!!」制作はスタートした。 地方創生ムービーとしての「鬼ガール!!」制作は、まさにゼロからのスタートだったという。 ゼネラルプロデューサー・西野修平氏が加わると、新たな取り組みを街の人々に知ってもらうため、まずプロダクションとして“映画塾”を開催した。 「映画塾では予想を超える60名ほどの参加者が集まり、せっかく作ったのであれば映画祭もしよう!と街の文化ホールでの映画祭には1,200人ほどが集客。このとき、あ、行ける!と思いました」(プロダクションノートより)。 さまざまな出会いを経て、地元の盛り上がりを受け協賛金も集まり始め、プロダクションが動き始めた。「地元も熱が増していき、撮影中は、連日手作りのケータリングを地元の皆さんに振る舞ってもらう日々で、町中がホットになっていた」(プロダクションノートより)。街全体が「鬼ガール!!」という目的のため一つになっていった。 ■ 「その時、突風が吹き、風が我々を包んだ」 クライマックスシーンにも、地元・河内長野での不思議な縁が働いた。 クライマックスの連鎖劇シーンの執筆中、シーンに合うロケ地がなかなか見つからず、「今回は断念しないといけないシチュエーションと内容かと、あきらめかけていた」という瀧川監督。 メインのロケ地を視察する中で訪ねたのが、檜尾山観心寺。高野山真言宗の遺跡本山で南朝ゆかりの地として知られ、楠木正成の学問所でもあったこの寺で、住職が急に「実はまだお見せしていないところがあるのですが、見ていかれますか?」と案内してくれたのが、奥の恩賜講堂だった。 「その場にいた全員が、息を飲み、あ、ここでやりたい!と言葉を出そうとしたその時、突風が吹き、恩賜講堂のカーテンや扉が開いて、風が我々を包んだ。まるで、『お前ら本気でやるならここでやってみーや』と言われているように感じ、運命と縁の導きを強く強く感じた」(プロダクションノートより)。この経験は脚本にも反映され、瀧川監督自身「今でもこの連鎖劇のシーンには強い力を感じます」と振り返る。 “田舎嫌い”だった瀧川監督が、じっくり地元と、そして地元嫌いだった自分自身と向き合って生まれた映画「鬼ガール!!」。そこには瀧川監督にしか切り取ることのできない河内長野の姿が収められている。 「ザテレビジョンYouTubeチャンネル」では、映画「鬼ガール!!」の冒頭シーン5分間の映像を独占公開中。今なお鬼伝説が残る河内長野を舞台にした本作。それは、人、鬼、神羅万象の不思議な導きが体感できる作品なのだ。 (ザテレビジョン)