「もう耐えられない」29歳大卒ニート〝懺悔ツイート後〟に起きたこと「社畜なんてなるか!とイキってた」
大学を卒業後、いわゆる「ニート」として生きてきた男性がいます。学校の級友から受けた心ない仕打ちのため、人とつながれている実感が薄れた思春期。当時の痛みを引きずり続け、半ば人生を諦め、働くことも放棄しました。しかし30代を目前にして、自ら「モラトリアム」に終止符を打とうと決めたのです。「もう夢を見る余裕はない、強くなりたい」。一人の青年が、生き直しを図るまでの日々を追いました。(withnews編集部・神戸郁人) 【連続ツイート】「せめて人間になりたい」4万いいね集めた投稿「私かと思った」「涙しか出ない」共感の嵐
連続ツイートにつづられた生々しい言葉
「社畜なんてなるか! とイキってたニートの末路を書く」。昨年11月、そんな一言から始まるツイート群を目にしました。 学生時代、同級生の嫌がらせにより、クラスに居場所を見いだせなくなったこと。「自由に生きたい」と就職活動をせず、ニート生活を送っていること。SNS上のインフルエンサーに心酔した末、ある日突然、社会で孤立していると気づいたこと……。 30以上の投稿に並んだ生々しい言葉は、まるで懺悔(ざんげ)のようです。同時に、後ろ暗い過去と誠実に向き合い、やり直したいという思いにもあふれていました。4万以上の「いいね」がついたツイートを見ると、共感や励ましのコメントが連なっています。 発信者は、大学を卒業後、無職のまま3年ほど実家で過ごしているという29歳。どういった経緯で、今の暮らしに至ったのか。なぜ胸の内にある感情を、ツイッター上で絞り出したのか。直接答えが聞きたくなり、連絡を取りました。
社会と距離を置いた「原体験」とは
今年1月上旬、オンライン通話でやり取りした男性は、「トニー」と名乗りました。匿名を条件に取材に応じ、画面上にはツイッターアカウントと同じ、黒一色のアイコンが映し出されています。 ニートになった「原体験」は何だったのですか――。尋ねてみると、ゆっくりと言葉を紡ぐように、中高時代の思い出を話し始めました。
ひどいあだ名と、繰り返された陰口
学生時代のトニーさんは目立たず、引っ込み思案な性格でした。そのため周囲の人に、弱々しい印象を与えがちだったそうです。中学時代、同級生に付けられたあだ名は「ゾンビ」「お化け」。直接的な暴力こそなかったものの、尊厳を傷つけられる日々でした。 「自信のなさや、暗い感じが伝わったんでしょうね。同じ組の生徒全員から、下に見られていたと思います。同じ小学校出身の友達はいましたが、相談はできなかった。深い仲ではありませんでしたから。そういうものだと思って、周りからの仕打ちを受け入れていました」 地元の高校に進んでからは、状況は更に悪化します。入学早々、クラスで後ろの席だった男子生徒から、悪態をつかれるようになったのです。理由は「たまたま話しかけたこと」でした。 名前順が近いため、体育の授業でペアを組まされたり、同じ運動部で一緒に練習させられたり。ことあるごとに陰口をたたかれました。部活の合宿で、トニーさんとゲームに興じていたチームメートも、次第に同調するようになったといいます。 「男子生徒は容姿端麗で、運動や勉強も得意な『陽キャ』。とても逆らえず、自分に貼られた『陰キャ』のレッテルをはがせなかったんです。完全に『学習性無力感』に陥っていたと思います。それでも、学校を休んだり、転校したりする気力はありませんでした」 部活を1年で辞めると、自宅と学校を往復する日々を送ります。帰宅後は、ひたすらテレビゲームをやり込んだり、インターネット掲示板に入り浸ったりしていました。 むくむくと膨れ上がる青春への憧れと、級友への妬(ねた)み。「俺は、お前たちとは違うんだ!」。勉強に恋愛にと、忙しい日々を送る他の生徒に対し、そんな感情を抱くようになっていきました。