「エミュー」放牧で町おこし 串焼きや加工品で肉の魅力発信 佐賀・基山町
大型鳥「エミュー」による町おこしが佐賀県基山町で進む。耕作放棄地を活用してエミューの放牧が広がり、飼養羽数は500羽まで増加した。タンパク質や鉄分が豊富な肉を売りにした焼き鳥店や加工品も登場し、町内で生産と利用の輪が広がりを見せる。(三宅映未) 焼き鳥店や加工品も登場(全3枚)
調理法工夫し柔らかく
地域では休耕田が増え、イノシシによる農作物被害も深刻化していた。だが、エミューを放牧するとイノシシが近寄らなくなった。町は、ジビエ(野生鳥獣の肉)解体処理施設にエミュー専用レーンを設置。イノシシとともに肉の利用を進めている。 ただエミューの肉は、栄養価が高い半面、脂身が少ない。焼くと縮みやすく、利用が広がらない一因となっていた。 2021年4月、町内に開店したテークアウトの焼き鳥店「笑顔you(えみゆー)」は、エミュー肉の特性に合わせて調理法を工夫している。肉は筋切り器で柔らかくして串を打つ。レバーとハツは、独特の臭みを消すため低温調理を施して提供する。エミューの骨のエキスを使った特性のタレも考案した。徐々に地元で評判が広がり最近は、まとめ買いするリピーターも増えてきた。 店主の堀彰さん(41)は4年間、エミューの飼育に携わった経験を持つ。「今はエミューを少しでも多くの人に知ってもらいたい」と、エミュー肉の串焼きは1本150円、レバーとハツは同100円と、採算度外視でエミュー肉の魅力を発信する。
産学連携で万能ソース開発
エミューを飼育するきやまファームは21年12月、西九州大学(佐賀県神埼市)の学生と連携し、エミュー肉を使った万能ソースを開発。ミンチ状の肉を重量の30%使用、トマトや香辛料で煮込んで幅広い用途で使えるようにした。 学生の発案で、人づてに認知度が広がることを願い、パッケージは封筒状にした。商品名は語呂から「笑便(えみゅーびん)」と命名。180グラム入り600円で販売する。 同社は「飼い始めた当初より評判や注目は高まり、飼養を希望する人からの問い合わせも増えている。今後もエミューの活用の輪を広げていきたい」と話す。 <ことば> エミュー オーストラリア原産の大型鳥。11月から翌3月に産卵期を迎え、生後18カ月で体長1・7メートルほどの成鳥となる。体重は40~60キロ。人に対しては温厚で飼いやすい。肉と卵、羽根、皮、脂肪と用途が多彩なことが特徴だ。
日本農業新聞