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映像で「時間」の本質を問いかける。第12回恵比寿映像祭が開幕

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美術手帖

 2009年から恵比寿の東京都写真美術館を中心に開催されてきた、映像領域と芸術領域を横断するフェスティバル「恵比寿映像祭」。その第12回目が、2月7日に開幕した。  今回のテーマは「時間を想像する」。15日にわたり、17の国と地域から78組のアーティストやゲストが、展示や上映、ライブイベント、トークセッションなどを通し、「時間とは何か」という映像が持つ本質を問いかける。  今回の映像祭のディレクターを務める東京都写真美術館の田坂博子は、このテーマについてこう語る。「時間は非常に身近なものです。いっぽう、映像というメデイアは現実をそのまま映し出すものだと、私たちは思っています。今回、様々なアーティストが作品のなかで考えている時間が、私たちが日常で考えていない時間のことを改めて気づくようなきっかけになればいいなと思います」。  メイン会場となる東京都写真美術館のロビーでは、マーティン・バースのヴィデオ作品《スウィーパーズ・クロック》(2009)が来場者を迎える。本作は、バースの「リアルタイム」シリーズのうちの一作品。映像にうつる清掃員たちが、ゴミからなる分針と時針を1分経過するごとに動かすことで、抽象的な時間の概念を人々の身体による動きで視覚化させる。  時里充の「見た目カウント」シリーズは、複数のモニターとその傍に設置される電磁カウンターによって構成されるもの。モニターに登場する人々は、一定のテンポに合わせてエクササイズし、電磁カウンターはその身体の動きをカウントしていく。反復する身体の動きとカウント音は、時間に対する感覚を麻痺させる。  エクササイズをする人々は、今夏の東京で開催されるオリンピックとパラリンピックも思わせる。オリンピックをテーマにした作品としては、ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・ザニの《移動の自由》(2017)も見逃せない。  本作は3つのスクリーンによって構成されるもの。それぞれのスクリーンには、過去、現在、未来を表す映像を流している。過去の部分では、1960年のローマ・オリンピックでサハラ以南のアフリカ人にとって初の金メダルを獲得したアベベ・ビキラに関するドキュメンタリーを上映。植民地主義から解放されていくアフリカの象徴とも言えるアベベの軌跡を追うとともに、現在のイタリアにおけるナショナリズムやファシズムの台頭を問いかける映像と、難民や移民が「自由に移動する」ことができる未来を想像する映像を見せる。  昨年、第58回のヴェネチア・ビエンナーレで作品を発表したスタン・ダグラスとナム・ファヨンは、今回の映像祭で同ビエンナーレ出品作品を展示。ダグラスのヴィデオ・インスタレーション《ドッペルゲンガー》(2019)は、二人の宇宙飛行士の主人公が何光年も離れた惑星間を瞬間移動したあと、すべての物事が逆転してしまうというストーリー。いっぽう、ナムの《半島の舞姬》(2019)では、第二次世界大戦前から活躍してきた北朝鮮の舞踏家・崔承喜(サイ・ショウキ)の軌跡をたどりつつ、東洋の新しい舞踊の可能性を提示する。  サブ会場となる日仏会館では、日本を代表するアーティストグループ「ダムタイプ」の共同設立者でありビジュアルクリエイターである高谷史郎が、新しいコミッション作品《Toposcan/Tokyo》(2020)を発表する。  本作は、2013年に東京都写真美術館で開催された高谷の個展で発表した《Toposcan/Ireland 2013》(2013)の東京版。本作は、8台のモニターに映された映像を1ピクセル分ずつ横に引き伸ばしていくというもの。東京で撮影した風景は、織物が紡がれるかのようだ。  また、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場では、360度全方位から打ち上がった花火の実写映像とCGアニメーションによる作品《ハナビリウム》(2019)が、屋外に設置されるドームシアターで上映。一瞬を刻む花火には、様々な願いごとへの思いも含まれている。  これらの展示のほか、ブラジルを代表する映像作家であるアナ・ヴァスや、ベン・リヴァース&アノーチャ・スウィーチャーゴーンポン、小森はるか+瀬尾夏美、遠藤麻衣子らによる作品の上映や、高谷史郎の活動を記録したドキュメンタリー映画《SHIRO TAKATANI, BETWEEN NATURE AND TECHNOLOGY》の特別上映+高谷と長谷川祐子によるトーク、そしてSKYGGEとAi.stepがAIを使った音と映像のライブパフォーマンスなど、多彩なプログラムも開催される。様々な表現によって想像された時間を会場で目撃してほしい。

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