<ボクシング>村田が中国・上海でKOマシンへ変貌する!
その気持ちを証明するかのように、この日、帝拳ジムで行われた公開スパーリングでは、11勝(5KO)6敗3分のホスエ・アティリャーノ・メンドサ(30歳、メキシコ)を“TKO”してみせた。2ラウンドの予定だったが、村田の重たい右のストレートに、左のアッパーが、何度もまともにボディをえぐり、顔面にも右ストレートがヒット。グロッキー気味になったスパー相手をみかねた田中トレーナーが、「ちょっと危ない状態なので、1ラウンドで終了させてもらいます」と予定を繰り上げて1ラウンドでスパーを強制終了したのである。 KOマシンへの変貌を予感させる村田のパンチ力アップには理由がある。 「前の試合を見直すと、重心が少し後ろに乗っていた。それでは強いパンチが打てない」 実は、村田は、フォーム改造に着手していた。 「右足に体重を乗せていると、坂道の上でボクシングしているようなもので、体重が乗らない。左の股関節に乗っていくようなバランスに変えた。パンチ力が増した実感がある」 確かにスパーで見た村田の一発一発のブローは威力が増していた。 さらにもうひとつ。野球のキャッチボールからヒントを得た腕の体から離すタイミングの微調整がある。「たまたま友人とキャッチボールをしていたとき、ボールにカーブ回転がかかっていた。体の動きに対して腕の動きが少し遅れていたんです。これはボクシングと共通している体の使い方。そうなるとパンチにうまく体の力が伝わらない。自分の意識よりも、ちょっと早く手を体から離すようにしたんです。ボールを投げるのに置き換えるとカーブ回転しないような動きですね」 なにげない疑問をボクシングにつなげるのが、村田のインテリジェンスの高さである。 そのせいか、海外からのスパー相手がまだ来日していなかった年内は、国内のボクサーを相手に目慣らしをしていたが、“ジム内KO”を連発していたという。また密着戦で上半身にしなやかな動きが生まれているのも目についた。これも、重心バランスを前へ移動させた成果か。8戦全勝ながら5KOと、KO率の低さが気になっていたが、ついに本格的なKOマシンへと変貌を遂げるのかもしれない。 この12日に30歳になる村田が、「勝負の年! 僕の年!」と位置づける2016年。世界挑戦の計画が本格的に進められる、その年の初めに、まずは上海でインパクトのある9勝目が見れそうである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)