魚の鮮度に革命を起こした「神経締め」をウエカツ水産 上田勝彦氏に訊く
最近、料理屋などでも「今日の鯛は神経締めで……」という旬のワードが飛び交っているが、「神経締め」とは一体どのような技なのか。神経締めを世に広めた立役者の上田勝彦氏は話す。
魚がもつ様々な旨味をあらゆる技術で開かせる
「神経締めの目的は、死後硬直までの時間を延ばし、2つの旨味成分の生産を増やすこと。魚は死後20時間までは甘みを主体に感じさせるイノシン酸が中心。その後、硬直期に入ると始めは旨味はあまり感じられなくなりますが、硬直が解けるにつれて魚の細胞が分解し始め、アミノ酸などの複雑な旨味(熟成味)が徐々に増加します。この2つの旨味のピーク時間を高めながら、保存期間を長くするのが神経締めの主な狙いです。魚の旨さというものは締めた直後から腐敗するまで、様々に質が変化する、その段階に合った調理法で味わうのが魚の醍醐味です」 そう聞くと、魚の旨味のピークやグラデーションをもっと知りたい! と渇望してしまうが、我々のような素人料理人にも、神経締めは挑戦できるものなのだろうか。 「頭骨の形や位置、神経の通るルートや太さは魚種やサイズによって異なり、それなりの知識と経験が必要。ただ、この技術の根底には、もし自分が魚だったらどのように安らかに絞められたいかという思索があります」 まずはその辺りを理解するためにも、上田氏に本場の神経締めをご披露頂いた。
上田氏の神経締めを拝見!
上田流神経締めは魚への愛情が細部に光る。鯵でその手順を見せていただいた。 (撮影協力=ひまわり市場上大岡店)