久保建英の「連係力」がさく裂 アヤックス戦1G1Aの活躍に地元紙が「魔法」と激賞
【ゴールに結びついた「連係力」】 久保は連係の渦の中心になることで、簡単にチャンスを作り出していた。サッカーでは、コンビネーションを作るほうが、効率的な攻撃を生み出せる。そこでのスキル、ビジョンこそ、"センス"と言われる。 その一方、久保は「個」の強さも見せつけている。 前半アディショナルタイム、自陣でオヤルサバルからのパスを引き取ると、猛然とドリブルをスタート。久保番だったヨレル・ハトに、悪夢をよぎらせた。結局、折り返しのパスがブロックされたところで放った右足シュートは外れたが、「ゴールに向かう手段はいくらでもある」と敵を精神的に追い込んでいる。 後半の久保は、心理戦でハトを凌駕していた。オランダ代表左サイドバックを、ものともしていない。縦への突破から右足での決定的なクロスなど、警戒心から飛び込めなくなった相手をなぶるようだった。 昨年10月、サン・セバスティアンでの取材で、ラ・レアルでレジェンドと言われる元選手たちに、久保のプレーの特徴について聞いているが、共通していたのは「連係力の高さ」だった。 「周りを使い、使われるコンビネーション」 それは、誰しもに与えられているわけではない。このセンスを持っていることで、限りなく選択肢が増える。だからこそ、久保の個人での突破にも、相手は後手に回らざるを得ない。必然として、ディフェンスにパニックが起こるのだ。 アヤックス戦は、その点で象徴的だった。 66分、久保は右サイドバックで途中出場したホン・アランブルとの素早いパス交換で右サイドを突破し、内側を攻略。ハトを置き去りにし、左足での精度の高いクロスを、ファーサイドから飛び込んできたアンデル・バレネチェアに合わせ、先制に成功している。 その連係力を思い知らせていたことが、冒頭のダメ押しゴールに結びついた。
言うまでもないが、それは魔法でも、呪術でもない。さまざまな手数を見せていたからこそ、敵はすでに混乱していた。アヤックスはハトを下げ、新たなマーカーを送り込んできたが、後ろから久保を削るしか能がなく、イエローカードを献上。そして、まるで道が開け放たれたかのような不思議な現象が起きたのだ。それは必然だった。 「久保がまたもチームを背負う戦いを見せた!」 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、手放しで称賛している。 ELのグループフェーズで脱落圏にいたラ・レアルは一気に16位までジャンプアップ。9~24位のチームに与えられるノックアウトフェーズプレーオフ圏に入った。残り3試合、ディナモ・キエフ、ラツィオ、PAOKというチームとの決戦になる。 ラ・レアルは欧州で夢を見続けられるか、そのカギを握るのは日本人だ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki