中国の露骨な嫌がらせで「コロナ対策の優等生」台湾がいま苦しんでいる事情
2月17日、日本でもようやく新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種が始まった。日本政府は「主要国のなかで非常に遅い」「ワクチン競争に負けている」とメディアや国民から非難されているが、その一方で「コロナ攻防戦の優等生」である台湾が、中国の妨害でワクチンの確保に苦しんでいる。 【画像】中国の露骨な嫌がらせで「コロナ対策の優等生」台湾がいま苦しんでいる事情
中国の妨害で500万回分の契約が飛んだ!?
世界中が新型コロナウイルス感染症ワクチンの確保に熾烈な駆け引きを繰り広げるなか、効果的な水際対策で感染爆発を防いでいる台湾が、意外にも、ワクチン確保に苦しんでいる。 台湾政府の衛生福利部部長(厚生大臣に相当)とコロナ対策本部「中央流行疫情指揮中心(CECC)」指揮官を兼任する陳時中(チェン・シィヂョン)は、17日の会見で、ため息混じりに「ドイツのバイオ企業バイオンテックと約500万回分のコロナワクチンを調達することで合意していたが、“特定の人たち”の干渉で契約が不可能になった」と告白。「中国」を名指しこそしなかったが台湾全域がショックに包まれたと、台湾国営通信中央通訊社が伝えた。 陳部長によると台湾は2020年秋、バイオンテックと米製薬大手ファイザーが共同開発したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの調達で合意したが、バイオンテックの中華圏における総代理は中国の製薬会社、上海復星医薬(シャンハイ・フォサン・ファーマスーティカル)で、台湾政府は、中国政府から外交圧力が生じることを懸念し、交渉の経緯の公表を遅らせていた。 そして双方のプレスリリースの準備も整った契約前夜になって上海復星医薬が突然、正式な契約締結を拒んできたという。陳部長は「台湾人が幸せになることを願っていない人びとがどこかにいるのだろう」と皮肉まじりに吐き捨てた。上海復星医薬はバイオンテックに8500万ドル(約90億円)のライセンス料支払いとドイツへの5000万ドル(約53億円)の投資に同意し、独占販売権を入手した。 陳部長は1月28日、台湾がコロナワクチンの確保に苦しんでおり、接種のタイムスケジュールが組めない現状を吐露。「ワクチンは主要国が独占している。国によっては総人口の4倍もの量を購入している例さえあると聞く。なぜ世界保健機関(WHO)や国際連合(UN)が買い占めを止めるために介入しないのか疑問だ」と不満をぶちまけた。 WHO主導の共同購入枠組みプラットフォーム「COVAX(コバックス)」に台湾も参画しているが、陳部長によると、「ワクチンメーカーは主要国からの圧力を受けているため、メーカーからのCOVAXへのワクチン供給量は当初の想定より少ない」という。 2月22日、陳部長は、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したウイルスベクターワクチンを1000万回分、米製薬大手モデルナが開発したmRNAワクチン505万回分、COVAXを通じて476万回分を確保したと発表。 だが台湾の総人口は2360万人。全国民の複数回接種には大幅に足りず、第二相臨床試験(フェーズ2、治験の第2段階)を進めている台湾製薬2社、高端疫苗生物製剤(メディジェン・ワクチン・バイオロジクス)と聯亜生技開発(UBIアジア)のコロナワクチン計2000万回分も確保した。さらに、米バイオ医薬品大手ノババックスや製薬・医療機器大手ジョンソン・エンド・ジョンソンなど、コロナワクチンの第三相臨床試験(フェーズ3、治験の最終段階)を進行中のメーカーとも調達交渉を続けている。