ブルース、それは歌の原点 故郷・熊本に届けたい魂の歌声 八代亜紀さん
今、なぜブルースなのか?
『哀歌ーaiuta-』は、長年歌ってきた歌謡ブルース、米国の伝統的なブルースに加え、八代さんのために書き下ろされた新曲ブルースから構成されている。なぜ、今、あらためてブルースなのか。 「ブルースは歌の原点ですから。日本でいう浪曲だと思っています。私ね、歌で人の魂を揺さぶることが大好きなんですよ。難しいメロディーや歌詞でなくても、淡々とした中で、魂をえぐるような人の生き方を描いた音楽が好き」 『哀歌ーaiuta-』に収録されている中村中(あたる)さんが作詞作曲を手掛けた『命のブルース』は、親に捨てられた人が懸命に生きる姿を描いた歌だ。 「とても哀しい歌。最近は子どもの虐待のニュースを聞かない日はないですね。でも歌を聴こうと思う人には救いがある。歌を聴く機会すらない人たちに何とかして歌を届けられないかと思っています」 哀しく絶望的な歌もあれば、明るいノリでせつない歌詞の歌もあるのがブルース。聴いて涙を流せど、どこか希望の光が差し込んでくるのが八代流だ。 同じく新曲、THE BAWDIES提供の『Give You What You Want』はひたすらノリよくカッコいいナンバーで、八代さんの”~baby”の甘い囁きが耳に残る。CRAZY KEN BAND提供の『ネオンテトラ』は、「暗くて後ろ向きで何が悪い」とも言わんばかりのどっぷり浸れるとことん哀愁漂う悲しい歌だ。往年の名曲に加え、新しい試みとこれからの進化への期待を感じさせてくれる。 CDを聴いたファンの感想は意外にも、10~30代の若者からの声が多い。「続編が聴きたい」「もっといろいろなジャンルの歌を歌って」など。そんなうれしい若者からのエールにも、どんどん応えていきたいという。
演歌、ジャズ、ブルース……歌い分けはとくにしない
「イントロ聴いたら、その曲に合わせて性格がコロコロ変わります。リズムで歌うのが好き。暗い曲でもリズムにのって、希望を感じる歌、以前から八代演歌はそう批評されていましたよ」 大好きなタイプの歌は男性の立場になって、いとおしい、かわいい女性に想いを寄せて歌う歌。 「『舟唄』では完全に男になっていますよ。私が男だったら、こういう女性が大好きだろうな。切ない感情を口に出さず、その人の前では涙を見せずに陰で「さみしいの、会いたいの」っていう女性像が浮かんでくるような物語の歌がいいですね」