自分は「団塊ジュニア世代の代弁者」――安住紳一郎が語る、令和のおじさん総括論
上長として、セクハラ、パワハラの指摘を受けないように注意も払っている。例えば後輩を食事に誘う場合、「本当に自分と話をしたいと思っているかどうか」を冷静に判断し、自分寄りになっているバイアスにも補正をかけて、誘うべきか否かを熟慮する。 「ほぼ三審制のような感じです」 その上で “ツアーのお知らせ”風な文章を作成し、LINEなどで送る。 「『千歳烏山駅から徒歩で15分もかかるそば屋なのに、すごく人気のある店があります。秘密を探りに、実際にその味を食べに行きませんか(おごり)。明後日の水曜日、午前11時、最少催行1名から』とか。なるべく断りやすい文言にすることと、穴場的なグルメで釣るように気を配っています(笑)」 若い後輩たちをハシゴ酒に連れ回す時代は、コロナが拍車をかけて、遠い過去のものとなりつつある。「つまらない企画を出すと次からはお客が来ないんじゃないかみたいな、個人ツアー会社のような苦悩はありますけど」と安住は苦笑する。なぜ、そこまでして後輩を誘うのか。 「林美雄という、TBSの先輩アナウンサーがいました。破天荒な人で、早くに亡くなっているんですけど。林さんが53くらい、自分は30年下だったから当時23、24歳くらいの頃、いろんなところに連れ回されたんですよ。とにかく赤坂と新宿のスナックによく連れていかれて、知り合いの日舞の発表会とか、知り合いのママの誕生会とか、近所で子猫が生まれたらしいから見に行こうとか(笑)。何か具体的にアナウンス技術を教えてくれるわけでもないし、あのときは本当に面倒だなって思いながらしぶしぶついて行ってました。でもね。あれから20年以上たつと、その経験がすべて、キムチみたいに熟成されるんですよ。一度は役に立たないと思って埋めておいたものが、ものすごい“秘薬の壺”みたいになっちゃって、林さんとの体験談を出すと、どこでもめちゃめちゃウケる。今やそれは、僕にとっての味なんです。ヨソでは出せないウチの店だけのオリジナルの味なんです。宝物です」