唯一のインタビュアー・松本圭世「完全な素人は私だけ」プロだらけの麻雀界に飛び込んだフリーアナ/麻雀・Mリーグ
レギュラーシーズンだけで各チーム90試合、180日間に及ぶ長期リーグ戦のプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。選手30人、実況者3人が入れ替わりで登場する中、唯一無二の専属インタビュアーなのがフリーアナ・松本圭世だ。2018年のリーグ発足から、ほぼ全試合で勝利者インタビューを担当。今期からは敗者のコメントも聞くようになった。「Mリーグに携わっている人は選手も実況もみんなプロ。完全な素人は私だけ」という、超ハードな環境の中で、選手の魅力を最大限に引き出すためにどんな努力をしているのか。麻雀ニュース番組「熱闘!Mリーグ」が、その秘密に迫った。 【動画】フリーアナ松本圭世、Mリーグにかける熱い思い 静岡生まれの松本は、高校時代に麻雀を覚え、名古屋大学卒業後はアナウンサーへ。後にフリーに転身すると、趣味と仕事を両立させるMリーグのインタビュアーを務めることになった。ただ、これまでの麻雀番組は、対局に出る人も、その様子を伝える人もプロばかり。インタビューをするにしても、最高峰の選手が集まるMリーグのレベルについていくのはアマチュアの松本にとっては至難の業だった。 毎試合、誰がアガったか、どんな流れで放銃したか、事細かくメモを取った。その数はもう10冊以上にもなる。またインタビュー時に選手のパーソナリティをうまく引き出せるように準備も怠らない。たとえばプライベートでも仲がいいKADOKAWAサクラナイツ・岡田紗佳(連盟)の場合であれば「赤ドラをたくさん入れるためにネイルを真っ赤にしたんです」という話を聞いていた。またセガサミーフェニックス・魚谷侑未(連盟)が、流れを変えようとユニフォームを新調した話も聞いていた。ただ、2人ともその日はトップを取れずインタビューなし。聞いたネタは長く使えるものでもない。そのままお蔵入りした話は、100を超える。
学生時代から麻雀こそ打てたが、プロの世界とは無縁で、顔も名前もわからなかった。その穴を埋めようと選手とのコミュニケーションは積極的に取る。「その人がどういう人か私がわかっていないと、伝えることのアシストもできない。信用できる人間じゃないといい言葉を引き出せない」と、話を聞くだけでなく自分を知ってもらうことでも、会話は必要だった。 いくら仲がいい選手であっても、インタビューの時間はプロに徹する。岡田が初勝利時に松本の顔を見て涙をポロポロと流したが「正直、私もめちゃめちゃ泣きそうだった。あくまでインタビュアーだし、私は崩しちゃいけない」と、しっかり仕事を果たした。選手の思いが溢れてしまうのも、気心知れたインタビュアーだからだろう。 今期から勝利者だけでなく、ラスを引いた選手にも話を聞く。ファンからは否定的な声も出てきたが、実際に質問をする松本はやるべきだと主張する。「選手が言葉を発する場はたくさんあるべきだし、敗者にだって思いがある」と明言。一番ぐっと来たインタビューについて聞かれても、悔しさとふがいなさに涙したKONAMI麻雀格闘倶楽部の大ベテラン・前原雄大(連盟)の名を挙げた。 麻雀を打つことだけ考えれば、他にも候補者はいくらでもいる。ただ松本が断言するのは「誰よりもMリーグファン」であること。選手に寄り添い今の思いを引き出す。その熱い思いは、誰にも負けない自負がある。選手からも、ファンからも「まつかよ」の愛称で呼ばれる孤高のインタビュアーによって、トッププロの戦いはさらに彩られる。 (ABEMA/熱闘!Mリーグより)