Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

芸術家たちのいまは?──新型コロナウィルスで外出制限下のパリから (5月2日)

配信

GQ JAPAN

フランスのフィリップ首相は4月28日の下院で「我々はウイルスとともに生きなければならない」と述べ、外出制限を5月11日から段階的に解除すると発表した。いっぽう、外出制限令下のフランスでは、芸術家たちがさまざまな新らしい試みをおこなっている。パリ在住のジャーナリスト・魚住桜子からの報告の第3弾。 【動画を見る】心が洗われる芸術家たちの団結

隔離のダンサー

フランスは5月11日から外出制限を緩和していくことになった。この日から6月1日まではいわば、“お試し期間”として小売店、マルシェ、小規模の美術館や図書館を再開する。また、・10人以上は集まらない・自宅から100km以上の移動は原則としてしない・公共交通機関ではマスクを着用する、などの外出条件も明らかになった。また、5月7日の時点での状況に応じて、11日からの外出制限解除のありかたに調整がくわえられる可能性が残されている。とはいえ、フランス政府の発表した方針は「コロナとともに生きる」というもの。ワクチンが開発されるまでは、コロナと共生することが前提になってきた。 現在、最も厳しい状況に置かれている業界のひとつは、文化芸術関係の人々である。 全国のすべての劇場とコンサートホールで公演が止まっている状況で、リハーサルをすることもできず、アーティストたちは活動する場所を失っているからだ。 そんななか、映画監督のセドリック・クラピッシュは、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちと『Dire merci / ありがとうを言うこと』と題したメッセージビデオを制作し、4月16日に公開した。活動自粛中のダンサーが各自の自宅で踊る姿を自撮りし、クラピッシュがそれを4分40秒の短編に仕上げたものだ。 クラピッシュ監督に電話インタビューに応じてくれた。 「3月17日に外出制限が始まって以降、オペラ座のダンサーたちはすべての公演がキャンセルされ、リハーサルすることも、ガルニエ宮でレッスンすることもできない状況です。各自、パリのアパルトマンや田舎の家で孤独に練習に励むしかない。ちょうど僕はオペラ座のダンサーたちと次回作の長編作品のプロジェクトを進めている最中でした。そこで、それぞれの持ち場でいま、何をできるか考えたのです。隔離中のダンサーたちに毎朝のトレーニングの様子か、自分で振りつけして踊る姿のどちらかを自撮りしてもらい、僕が編集することに決めました。音楽はセルゲイ・プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』。約4分間の長さに合わせてワンテイクで撮ってもらいました。統一感を持たせるために、垂直にカメラを配置し、カラーでフィルターをかけないように注文しました。当初ダンサーは10人くらいでしたが、この企画に賛同して20人、40人に膨れ上がり、最終的には60人になりました。彼らは4月10日から15日くらいのあいだに動画を撮り、僕の元へそれを送ってきて、編集は一日で仕上げました。僕の編集係は南仏で自粛生活を送っているので、彼女の編集機材を僕も同時にみられるソフトウェアを見つけて、離れて共同で編集しました。すべてを遠隔で行うのはまったく初めてのやり方でした」 今の心境についてはこう語った。「芸術文化は不要不急なものではありますが、人間の生活には欠かせないものです。外出制限が始まって以来、芸術へのアクセスは完全に塞がってしまいましたが、考える時間はたっぷりとある。一人になって突き詰めて考えることで、より親密で深い領域に入っていけそうな気がしています」

【関連記事】