なぜ“交通系の話”はあまり出てこないのか 「参院選 2022」の公約イッキ見
赤字ローカル線廃止、新幹線建設、鉄道事業者経営危機、モーダルシフトなど、鉄道のみならず交通分野は問題山積だ。そんな時期に参議院選挙が始まった。交通分野の公約を掲げた候補を探したら、数えるほどしかいなかった。国政の議論に地方交通の話題はふさわしくないか。あるいは票にならないか。なんとも寂しい結果となった。 【我田引鉄の大船渡線】 参議院選挙は7月10日に投開票が行われる。6月22日に公示され、125議席に対して545人が立候補した。脱炭素、周辺国や紛争への対応、物価上昇、新型コロナ対策など問題は山積している。そんななかで私は「交通問題」に注目する。545人の立候補者のうち、何人が交通問題を公約に明記しているか。 2日かけて「候補者名+公式」で545人の公式サイトをチェックした。驚いたことに、6月30日現在、候補者のうち200人以上が自身の公式サイトを開設していなかった。公式サイトはメディアを通さず、つまり共通アンケートではなく、自らの言葉で政策や公約を表明する機会ではないか。費用だってチラシを刷るより安い。これは交通問題以前に気になった。 総務省の調査でスマートフォンの世帯普及率は8割以上、NTTドコモ系列のモバイル総合研究所によれば、携帯電話保有者のうちスマートフォンは94%だという。70代以上の候補者は扱いにくいだろうとしても、60代の候補者は扱えると思う。 インターネット選挙運動は、13年の公職選挙法改正で解禁された。それから9年でこんな状況だ。ネットより街頭演説や握手のほうが効果的と見られているようだ。でもそれって、支持者や関心のある有権者向けだろう。投票率が50%を切り、選挙権年齢が18歳以上になったいま、浮動票獲得のためにも情報発信は必要だと思う。 公式サイトを持たない候補者も、動画サイトやブログ、SNSには参加している。支持者と対話したり近況を報告したりという用途には向いている。しかし情報が日々更新されていくから、固定したメッセージは消えてしまう。瞬発的な発言には炎上リスクもある。動画サイトに至っては、5分で読める話を30分かけてしゃべる。しかし私は何百人ぶんの動画に付き合いきれなかった。数人の候補者から選ぶなら動画でも良いかもしれないけれど、これから候補者を選ぶ人にとって政策や公約を探しづらい状況だ。