ザックJの守備は立て直せるか
ゲームコントロールに関して「メリハリ」というキーワードを使って改善点を挙げたのは、槙野である。7月23日のミーティングで中国戦のビデオを見ながら守備の課題を整理したといい、「パスを繋ぐときは繋ぐ。大きくクリアするときはクリアする。そのメリハリをしっかりつけて、序盤と終盤に関してはよりシンプルにプレーすることが重要になる」と語れば、青山敏弘はボランチの立場から、それを補足する。 「誰かがリーダーシップを発揮して、今、どういうプレーをすべきなのか指示しなければならない。それは、ボランチの役割だと思っている」 かつて、アトランタ・オリンピックやフランス・ワールドカップで分析を担当し、スカウティングのスペシャリストである小野剛氏は、「失点というものは、その場面よりもっと前のプレーに原因があるものだ」と語っていた。 中国戦の2失点目、駒野がPKを取られた場面も、元を辿れば、槙野の中途半端なクリアを拾われ、ペナルティエリア手前でフリーの相手選手にボールが渡ったプレーが失点の遠因にある。 その際、山口螢のアプローチが遅れ、後方にいた高橋が自分のマークを捨てて寄せに行ったが、今度は高橋がマークしていた選手が空いてシュートを打たれてしまった。これがバーに当たって跳ね返ったところの競り合いでPKが宣告されている。 山口のアプローチは本当に遅れていたのか。高橋が寄せに行ったとき、森重真人も自分のマークを捨てて空いた選手のマークに行くべきだったのか……。高橋が言う。 「所属チームによって人へのアプローチの間合いが違うから、見ているつもりが見てないと思われたり、行き過ぎて穴を空けてしまったり、認識のズレがいっぱいあった。それが前半からたくさんあったから疲弊にも繋がったのかもしれない。でも、1試合やったのは大きい。今日もビデオで振り返ったし、選手同士で話し合って感覚の摺り合わせができたので、無駄な部分がそぎ落とされて、少しずつ適切な守備ができるようになっていくと思います」 失点の多くは、最後の局面で1対1に負けるといった個人の問題だけでなく、いくつかのミスが重なったり、チーム全体のゲームコントロールに問題があったりするときに喫したものだ。 個人の能力を高めるのは、簡単なことではない。だが、ミスの連鎖の中のどれか一つを改善するのは、短期間でも可能なことで、それだけでも失点の確率をずいぶんと減らせるはずだ。オーストラリア戦では、今年3試合目となる完封勝利を飾り、勝ち点3とともに、失いかけている守備での自信も取り戻したい。 (文責・飯尾篤史/サッカーライター)