桜咲き誇る、幻想的なアート空間。『ダミアン・ハースト 桜』展とカルティエ現代美術財団の功績を紹介
イギリスを代表する現代作家のダミアン・ハースト。彼の最新作〈桜〉シリーズを紹介する展覧会『ダミアン・ハースト 桜』が2022年5月23日(月)まで、国立新美術館(東京都港区)で開催中だ。ダミアン・ハーストや展覧会の魅力、そして、〈桜〉シリーズを世界で初めて紹介したカルティエ現代美術財団について紹介する。 【写真】『ダミアン・ハースト 桜』展 写真はこちら
芸術、宗教、科学、生や死を考察する作家
ダミアン・ハーストは、現在56歳。30年以上にわたるキャリアの中で、絵画、彫刻、インスタレーションとさまざまな手法を用い、芸術、宗教、科学、そして生や死といったテーマを深く考察してきた。 最新作の〈桜〉シリーズは、19世紀のポスト印象派や20世紀のアクション・ペインティングといった西洋絵画史の成果を独自に解釈し、色彩豊かでダイナミックな風景画を完成させた。これまでとはかなりイメージが異なる作品で、大きいものでは縦5メートル、横7メートルを超えるものもある。空間が桜で埋め尽くされるような、幻想的な世界を体感できるだろう。
北野武、横尾忠則…日本のカルチャーも紹介してきたカルティエ現代美術財団
この〈桜〉シリーズを世界で初めて紹介したのは、カルティエ現代美術財団だ。カルティエによって1984年に設立された財団で、企画展やライブパフォーマンス、講演会などを通して、現代美術を広めることをミッションとしている。近年は、拠点としているパリにとどまらず、東京、ブエノスアイレス、ソウル、ミラノ、上海といった都市でも展覧会を開催してきた。 同財団のゼネラル ディレクターであるエルベ・シャンデス氏が「財団の使命とは展覧会を観る人に世界中のアーティストを発見してもらうこと」と語っていたように、有名無名問わずアーティストの発掘に力を注ぐほか、有名な作家でもまだ人々が観ていない作品を紹介する企画を生み出している。 同財団は、ヨーロッパに向けて、日本のカルチャーやアートシーンを紹介する役割も担ってきた。過去には北野武、村上隆、横尾忠則、川内倫子、森山大道などの展覧会を開催。展覧会を開催したら終わりではなく、そこからアーティストとの交流を深め、次の企画へと繋がることも。 例えば、2021年に東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT GALLERY3で開催された『横尾忠則:The Artists』では、横尾が手掛けたカルティエ財団にゆかりのあるアーティストの肖像画を紹介。もともと財団30周年を記念し2014年の展覧会で展示するために横尾に依頼した作品群に、新作を加えて、改めて個展として開催したという。長きにわたり関係を深めているからこそ実現できた例といえる。