メイウェザー対那須川天心の世紀の一戦でルール未定の違和感
メイウェザーの主戦場のスーパーウェルターは69.85キロ。天心が9月30日に堀口恭司と戦ったときは58キロの契約ウエイトだったので10キロ以上違う。 打撃系の格闘技の世界では体重差の影響は大きい。メイウェザーは、「階級は、あまり心配していない。私は、そもそもファイターとして小さい方だし、その中で持ち味を出す戦いをしてきた。重さありきじゃなくファイターのスキルを試される試合だと思う」と体重問題への考え方を示した。 確かにメイウェザーは、パワーファイターではなく、相手に触らせない高度なディフェンス技術とスピードを主体にしたファイティングスタイルだが、実力が均衡している場合、体重の重い方が勝つーのが格闘技界の常識ではある。だからこそ階級制度が成立しているのである。 榊原実行委員長は「両者の体重を合わせる考えはない。無差別の戦い」とコメントしたが、一方で「メイウェザーが145パウンドまで落としてくれれば」との希望も口にした。 145パウンドは約65.77キロ。通常体重が61キロの天心は、「あと3キロくらい増やしたい」と言っていたので、無差別と言いながらも、64、65キロあたりに歩み寄り、おおよそ2キロ差くらいでの戦いを想定しているのだろう。 ボクシングの1階級が、約3キロだから、2キロ差くらいならば、ほぼ同階級。それならば、今後のルール協議の中でメイウェザーに対して145パウンドまで落とすことを義務づけておくべきだろう。 会見の最後の質問では、互いの初対面の印象を聞かれた。 メイウェザーは、「よくシェイプされている。ジムで時間をかけてワークアウトしている結果だろう」と、“よいしょ”した。対する天心が、「身長以上に大きい。オーラがある。でもパンチは当たりそうだなと思った」と返すと、英訳を聞いたメイウェザーは、ニカっと笑い派手に拍手を送った。 その様子を横目でチラっと見た天心は無表情。明らかに気分を害していた。 会見後。そのことを聞かれると「舐められているのはわかっている」と答え、「見ため的に当たりそうだと思った。対戦した相手は、みんなそう思うんですかね?でもやれないことはない。キックボクサーだからこそのパンチのタイミングや軌道がある。負けるつもりは一切ない。本気で勝ちに行く」と、偉大なるレジェンドへ挑戦状を叩きつけた。 「何も気負わずに行ける試合は久しぶり。今までは自分が上の立場で自分が中心だったが、今回の話題は全部メイウェザー。自分には失うものがない。たとえ、ここで自分に黒星が付いても関係ない」。この気構えやよし。那須川が世紀の番狂わせを演じる条件も揃う。 「最高のエンターテイメント」「猪木―アリは最高のショーだったが、それ以上のショーを見せる」などと、上から目線のコメントを連発していたメイウェザーは、こうも語っていた。 「どこで戦おうが真剣勝負。私の戦いの理念は、ハードワークを惜しまない、ということ。それを限界まで追い求めて力をつけていく。やるべきことをしていきたい」 50戦無敗を守り続けてきた偉大なる王者に「負けられない」矜持はある。しかも、この試合の向こう側に「100億円」を稼ぐことのできるビッグマッチを見据えている。 ルール問題に違和感は残るが、この試合を「見たいか、見たくないか」と問われれば、迷うことなく「見たい」と答える。この試合は世界規模での海外中継も予定されている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)