ホンダ、四輪モータースポーツ2025体制発表会 「WEC参戦計画はないが個人的には出てみたい」と渡辺康治社長
本田技研工業は12月11日、都内にて2025年の四輪モータースポーツ体制発表会を実施した。 【画像】2025年のホンダレーシング四輪モータースポーツ活動計画を説明するHRC代表取締役社長 渡辺康治氏 HRC(ホンダ・レーシング)代表取締役社長の渡辺康治氏は2025年の活動について、「先日2024年シーズンの最終戦を終えたF1は、ホンダRBPT(Red Bull Powertrains)として、レッドブル・レーシングとレーシング・ブルズの両チームに4台のパワーユニットを供給し、2024年はマックス・フェルスタッペン選手がドライバーズタイトル4連覇という偉業を成し遂げました。また、1988年の16戦15勝を塗り替える、22戦21勝など数々の歴史的な記録を樹立してきたレッドブルとホンダのパートナーシップも、2025年が最後の年となりますので、最後のレース、最後の瞬間まで、全力でチームとともに戦ってまいります」と改めて決意を述べた。 国内のスーパーフォーミュラについては、「若手からベテランまでが速さを見せ、シーズンを通じて熱いチャンピオン争いをしてきました。惜しくもドライバーズタイトルの獲得は逃しましたが、野尻智紀選手が年間ランキング2位、牧野任祐選手が3位と、最終戦まで日本一速いドライバーを決める熱い戦いを見せてくれました。また、チームタイトルについては、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐選手と太田格之進選手が、2人で4勝をあげる活躍をみせ、見事チームタイトルを獲得しました。また、2023年にFIA F2で年間4位の結果を残し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した岩佐歩夢選手も2025年は、スーパーフォーミュラへの参戦を続けながら、いつF1のチャンスが巡ってきても戦える準備をしていきます。HRCは引き続きスーパーフォーミュラを世界につながる選手を育てる場として、今後も力を入れてまいります」と継続的なサポートを誓った。 続けて、2024年度は新マシン「シビックTYPE R-GT」を投入したSUPER GTについて渡辺社長は、「投入初年度ながら、100号車のSTANLEY TEAM KUNIMITSUがシーズンを2位で終えることができました。2025年こそはチャンピオンを獲得できるように挑戦を続けてまいります。また、スーパーフォーミュラライツでチャンピオンを獲得した小出峻選手がGT500に新たに参戦、Astemo REAL RACINGで塚越広大選手のチームメートを務めます」と新たなドライバー起用を紹介した。 選手の育成活動については、「F1を始めとする世界のトップカテゴリーで活躍する選手の育成を目指す“ホンダ・レーシング・スクール(HRS)”、では、優秀な若手が早い段階から海外で経験をするチャンスを今後も増やしてまいります。昨年HRSでスカラシップを獲得し、今年フランスのF4選手権でチャンピオンを獲得した加藤大翔選手は、2025年はフォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン・チャンピオンシップ(FRECA)にステップアップし、ART Grand Prixから参戦します。また、今年HRS Fomulaクラスを首席で卒業し、スカラシップを獲得した佐藤凛太郎選手は、フランスのF4選手権に参戦すほか、FIA-F4(日本)チャンピオンを獲得した野村勇斗選手は、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)に参戦します。2024年はSFLで小出選手、フランスF4で加藤選手、FIA-F4で野村選手と、国内外でホンダが育成してきた選手が3つのカテゴリー全てでチャンピオンを獲得することができました」とスクールの成果を述べた。また、今年HRSを卒業する新原光太郎選手と百瀬翔選手も、2025年はステップアップを果たし、FIA-F4選手権に参戦することを発表した。 ■ 海外は体制変更をしつつ人材育成と技術開発の両面の加速が図られている 海外の動きについて渡辺社長は、「2024年の初めに北米のモータースポーツ活動を担う“HPD(Honda Performance Development)を、HRC USA(Honda Racing Corporation USA)と社名変更し、グローバルの4輪モータースポーツ開発体制の強化に取り組んでまいりました。また、イギリスにHRC UK(Honda Racing Corporation UK Ltd.)を立ち上げ、現在エンジニアやメカニック、広報担当などのリクルート活動に入っているほか、一部は来年の1月から活動を開始。2026年からのF1新体制に向けて着々と準備を進めております」と報告。 また、アレックス・パロウ選手が2度目のシリーズチャンピオンを獲得した「インディカー・シリーズ」については、引き続きHRC USを通じてエンジン供給を継続。また、ポルシェ、キャデラック、BMW、ランボルギーニなど世界のトップメーカーがひしめく北米最高峰の耐久シリーズ「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」については、アキュラブランドで2007年から参戦していることを紹介しつつ、「2025年シーズンは、Meyer Shark Racingとパートナーシップを結びつつ、HRCの役割をさらに拡大させる」と渡辺社長。 具体的には、60号車と93号車の2台体制のうち、93号車のベースストラテジーやドライバーとの無線通信まで、オペレーションの主要部分をHRC USの技術者が担当するほか、チーム副代表を、HRC USの社長であるデイビッド・ソルターズ(David Salters)氏が兼任することで、人材育成と技術開発の両面の加速を図るという。また、93号車にはスーパーフォーミュラやSUPER GTで活躍する太田格之進選手も参戦することが明かされた。 今回、太田格之進選手が「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権」へ参戦することが発表されたことで、記者からは「LMDhマシンを使うIMSAに力をいれていくということは、今後世界三大レース(F1・WRC・WEC)の1つWEC、ル・マン24時間への参戦も視野に入れているのでしょうか?」と聞かれた渡辺社長は、「今のところWEC参戦計画はありません。今は2026年のF1に向けて注力しています」と断言。ただし、「個人的には挑戦できるなら挑戦したい」とコメント。 また、「出るとしたらドライバーは誰を選びます?」との質問にエグゼクティブアドバイザーの佐藤琢磨氏は、「参戦するなら育成している若いドライバーにどんどん世界に挑戦して経験を積んでほしいと思っています。ただ、自分も候補の1人に入れてもらえるなら、すぐにレーシングスーツに着替えてきます(笑)」と満面の笑みで回答。 最後に、F1に参戦中の角田裕毅選手のレッドブル・レーシングへの昇格について佐藤琢磨氏は、「この4年間でドライバーとしての成長は本当に右肩上がりだったと思います。先日直接会ったのですが、非常にリラックスしていたし、マネジメント能力も成長していますし、個人的には入ってほしいです」とコメントしていた。
Car Watch,編集部:塩谷公邦