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空襲はなかった。なぜゾウは殺されたのか 絵本『かわいそうなぞう』の真実 「猛獣処分」考(1)

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 太平洋戦争中の上野動物園におけるゾウ殺害の悲劇を描いた絵本『かわいそうなぞう』(土家由岐雄作、金の星社刊)は、評論家の秋山ちえ子(故人)が毎年8月15日に、TBSラジオで朗読していたことでも知られる。文庫版などを合わせ、累計157万部を超えるロングセラーである。  反戦童話の名作とされ、一般に実話と信じられている。出版社のホームページも「これは本当にあった悲しいお話です」と紹介するが、物語には重要な部分で史実と異なる内容がある。戦後75年、この作品をもとに、わたしたちは史実とどう向き合うべきか、考えたい。 (本稿は4回続き、47NEWS編集部・共同通信=佐々木央)  ■他に取るべき手段はなかったか  戦時下、各地の動物園で飼育動物を殺害したいわゆる「猛獣処分」は、絵本が素材とする上野動物園のそれが最初である。1943年8月から9月にかけてのことだった。そのころの東京のありさまを、絵本はこう描写する。

 ―せんそうが だんだん はげしくなって、とうきょうの まちには、まいにち まいばん、ばくだんが あめのように ふりおとされて きました―  史実をみる。東京への初空襲は42年4月18日、いわゆる「ドーリットル空襲」である。これは一種の奇襲であり、44年11月24日に次の空襲が行われるまで、東京には本格的な空襲はなかった。この史実との重要な齟齬は、児童文学評論家の長谷川潮が81年に『季刊児童文学批評』創刊号で指摘した。  大量の動物殺害は、東京の空がまだ平穏なときに実行されたことになる。しかし、絵本は史実に反する切迫した状況を前提として、次のように続ける。  ―その ばくだんが、もしも、どうぶつえんに おちたら、どうなる ことでしょう。おりが こわされて、 おそろしい どうぶつたちが まちへ あばれだしたら、たいへんなことに なります。そこで、ライオンも、トラも、ヒョウも、クマも、ダイジャも、どくを のませて ころしたのです―

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