「女性向け文具」って何!? ジェンダーを一括りする文具業界の違和感。
「女性ならでは」の感性とはなんだろう。例えば文具なら、ピンク色や花柄のこと? 連載第21弾は、いまだ男性優位な風潮が残る文具業界で働く女性のライターが直面した、謎のジェンダーステレオタイプについて。
7年前、私は文具専門のライターとなった。この世界に入って初めて、文房具は男性の世界なのだと思い知らされた。女性たちの社会進出が進んだ今でこそ「女子文具」というジャンルも知られてきたが、当時のこの業界は男性優位でプロダクトも実用性のみを重視したものが大半、女性のライターは皆無に近かった。そのため、さまざまな場面で自分が女性であることを意識させられた。 たとえば、私に打診される仕事の多くは「かわいい文房具の紹介」である。「おすすめ」を紹介してほしいという依頼に、私の考える「いい」文房具を提案すると、「こういう感じじゃなくて、かわいいのをお願いします」と返される。文具に精通した私への依頼というよりも、「かわいいものが好きな女性」への依頼と考えられているようなのだ。
女性はピンク好き、の呪縛。
メーカーから新作等のサンプル品が届くこともままあり、文具好きとしてはこの上なくわくわくする。しかし、いざ箱を開けてみると、高頻度でピンク色の文具が入っている。すべての女性がピンク好きとは限らないし、むしろスモーキーな渋い色味を好む女性だって少なくないはず。ピンクだけでもこんなに種類があるのかと驚かされる反面、女性=ピンクという根強い固定観念には辟易してしまう。 ピンクは書籍を出したときにもつきまとった。表紙の色や文字体にこだわった自著が刷り上がってきたときは飛び上がるほど嬉しかった。けれど、出来上がった本を確認してみると、避けていたはずのピンクが本の背の部分に入っているではないか。さらに、私のトークイベントを告知するポスターやチラシには、ピンクのみならず白のレース模様まであしらわれている。ことほど左様に、女性に対するステレオタイプが今も色濃く残っていることに唖然とした。