相馬の浜の台所(11月3日)
相馬市に誕生した「浜の駅 松川浦」で、九つの器を並べて提供する海鮮丼が話題を集めている。大きな丼にイクラとたまごを盛る。周りを囲む八つの小皿は相馬沖で水揚げされた白身の魚やタコ、シラスなど新鮮な海の幸で彩った。 相馬野馬追の総大将出陣の地として、「九曜」と呼ばれる藩主の家紋をモチーフにした。曜は星を意味し、中心の大きな丸い星を小さな八つの衛星が囲む紋様は、相双地方ではおなじみだ。情報の広がりを期待し「インスタ映え」も狙っている。 考案したのは旅館関係者や漁師ら有志で、手を携え施設内で食堂を営む。県内の漁業者は原発事故が起きて以降、出漁日数や漁獲量を制限した試験操業を続けている。国内有数の港として栄えた松川浦漁港のそばで、地域の賑[にぎ]わいを取り戻そうと始めた新たな挑戦だ。 風評払拭[ふっしょく]のため、まず地産地消の動きを盛り上げたいと、浜の駅では水産物だけでなく地元の農産物や土産品も扱う。「浜の台所」として住民の普段使いの需要にも応えながら、人気観光スポットへの成長を目指す。相馬の食文化の発信拠点が復興の旗印になるか。買って食べての応援が、その歩みを後押しする。