1年前、コロナを新聞はどう報じたか 朝日は「それほど感染は広がらないとみている」
ひたすら「冷静に」
中国の武漢市で「原因不明の新型肺炎」が確認されたのは2019年11月22日。日本のメディアが「中国の肺炎患者から新型コロナウイルスを検出」と報じたのは翌20年1月9日だった。あれから1年が過ぎたということになる。 ***
19年11月の主要ニュースを振り返ってみると、たった1年前なのに隔世の感がある。 具体的に2つのニュースをご紹介しよう。最初は東京オリンピックだ。月初めにIOC(国際オリンピック委員会)がマラソンの札幌開催を強引に決定し、日本で大きな波紋を呼んでいた。この頃、日本中の誰もが、東京オリンピックの予定通りの開催を、微塵も疑っていなかった。 次は安倍晋三氏(66)。当時は現役の総理で、11月に在職日数が憲政史上最高を記録した。その一方で、この頃は「桜を見る会」の私物化が取り沙汰されていた。批判や追求も盛んで、政治的には厳しい局面に立たされることも少なくなかった。 こうして見ると、たった1年しか経っていないのかという気がしてくる。とはいえ、ある日突然に全世界で新型コロナが猛威を振るい、立て続けに深刻な被害が発生したわけではない。 世界中の人々にとって、当初は中国の国内問題だった。まさに他人事、対岸の火事だった。日本も例外ではなかった。当初はどんな雰囲気だったのか、朝日、読売、毎日各紙の新聞記事から振り返ってみよう。
沈黙した3紙
そもそも意外なことに、日本の大手メディアで最初に武漢市の異変を報じたのは共同と時事通信だった。 両社とも2019年12月31日に記事を配信したが、朝日、読売、毎日の3紙は何も報じなかったのだ。 「中国で原因不明の肺炎患者相次ぐ 武漢で27人発症、政府が調査」(共同通信) 「原因不明の肺炎拡大=27人のうち7人重体-中国・武漢」(時事通信) (註:全角数字を半角に変えるなど、デイリー新潮の表記法に合わせた。以下同) 年が明けて20年となり、1月4日にNHKが「中国・武漢 原因不明のウイルス性肺炎患者相次ぐ 患者数44人・重症11人」と報じた。 だが、依然として3紙は紙面に記事を掲載しなかった。その一方で、産経新聞は1月5日、「中国で原因不明の肺炎 武漢で44人発症、11人重症」の記事を掲載した。 更に先行する共同通信は6日、「中国発の原因不明肺炎に厳戒 香港・台湾、惨禍再来恐れ」と中国大陸との往来が多い地域が厳戒態勢となったことを伝えた。