Jリーグ 複雑怪奇なスーパーステージの矛盾
トーナメントが成り立たない
過去3シーズンにおけるJ1を [1]年間総合勝ち点1位 [2]第1節から第17節までの1位と2位 [3]第18節から最終節までの1位と2位 ――の3点に分けてみると、実行委員が指摘する「分かりにくさ」を生みだす「矛盾」が露呈してくる。 【2010年シーズン】 [1] 名古屋グランパス [2] 1位:清水エスパルス、2位:名古屋グランパス [3] 1位:名古屋グランパス、2位:ガンバ大阪 【2011年シーズン】 [1] 柏レイソル [2] 1位:横浜F・マリノス、2位:柏レイソル [3] 1位:名古屋グランパス、2位:柏レイソル 【2012年シーズン】 [1] サンフレッチェ広島 [2] 1位:ベガルタ仙台、2位:サンフレッチェ広島 [3] 1位:サンフレッチェ広島、2位:横浜F・マリノス 年間総合勝ち点1位のチームと、両ステージの2位以内のチームのいずれかが重複し、トーナメントそのものが成り立たなくなるケースは、何も上記の3シーズンに限ったことではない。2ステージ時代の2002年のジュビロ磐田、2003年の横浜F・マリノスのように両ステージで優勝するチームが現れた場合、ポストシーズンの出場チームをめぐる状況はますます煩雑になるだろう。 Jリーグ側は、チャンピオンシップ開催を大前提とした上で、「年間勝ち点1位のチームはスーパーステージには出場しない」と規定した。その場合はスーパーステージを何チームで開催するか、4チームで行う場合には、どのチームを繰り上げで出場させるかといった点は継続審議とし、11月までに結論を出したいという。しかし、どのような善後策を用いても、分かりにくさは解消されないと言っていい。
ファンを無視した2シーズン制復活
2ステージ制の復活への動きが表面化した7月には、J1の各試合会場でサポーターたちが「世界基準からかけ離れた2ステージ制へ そこに日本サッカーの未来はあるの?」などと記された横断幕を掲げて猛反対し、実行委員会が開催されたJFAハウス前にも数十人のサポーターが詰めかけたことがあった。 また、ポストシーズンを新たに創設することによって、Jリーグ側は10億円以上の収入増を見込んでいる。内訳はスーパーステージやチャンピオンシップにつく冠スポンサー料やテレビの放映権料で、すでに「チャンピオンシップの1試合は必ず開催する」という条件で地上波での生放送の交渉が進んでいるという。 年間総合勝ち点1位のチームを「スーパーシード」的に扱う背景には、最も安定した力を発揮したチームをリスペクトするというサッカーの原点に立つだけでなく、サポーターを中心とするコアなファンの不満を和らげ、同時にテレビ局側の要望を満たす狙いも見え隠れする。 しかし、一連の議論では、コアなファンの周辺にいる一般のファン、選挙で例えれば無党派層をいかにJリーグに引きつけ、スタジアムに足を運ばせるかというテーマも俎上にあげられてきた。 言葉は悪いが、あらゆる方面へ八方美人的な配慮を施し、その結果として「2ステージ制+スーパーステージ+チャンピオンシップ」は複雑怪奇で分かりにくい開催方式となりつつある。これでは一般のファンの拒絶反応を呼び起こし、本末転倒とも言える結果を招きかねないのではないか。 (文責・藤江直人/論スポ)