誰もが認める名優の裏にある事情を知り、勝手に親近感をもち、心をつかまれたおじさん記者の話
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> “エンケン”こと俳優遠藤憲一(63)を取材する機会に恵まれた。 過日最終回を迎えたテレビ朝日系ドラマ「民王R」では、国民と入れ替わる武藤泰山総理を演じた。そして、現在公開中の映画「劇場版ドクターX ファイナル」では、テレビシリーズ第2期から出演し“御意”でおなじみの海老名敬を演じている。 「民王R」初回ではチーム泰山に初参加した、あの演じる冴島優佳との入れ替わりを演じた。その名演ぶりにSNSが騒然となったほどだ。遠藤は誰もが認める名優であり、それは記者にとっても同様だった。 だが、その裏にある事情を知ったのが、BS朝日「きっちりおじさんのてんやわんやクッキング」(18日午後11時、25日午後11時30分)取材会だった。同番組は、料理初心者の遠藤が、料理に挑む密着ドキュメンタリー番組だ。取材用で試写を見ると“名優”とは違った一面がうかがえた。 「ダメなところも全部出て、ちょっと滑稽で不思議な作品になっているんだろうなっていう風に思う」という遠藤。その言葉通り、ツッコミどころ満載だ。ネタバレになるため詳細は避けるが、取材会では「買い物に行くと、いつものルーティンは忘れないけど、たまに頼まれるものは忘れちゃう。だからメモしている」と明かし、「朝、家を出る時間もメモってます。さすがにですが、なんかあの、自信なくなっちゃったりするんで…」と続けた。 「あの名優が?」「セリフ覚えとは勝手が違うのかな?」。そう思った記者が質問すると、返ってきた答えは、シンプルに「苦手なんです」だった。 「『民王R』で言えば最終回の後半はもうセリフがかなり多くて、とにかく1人でしゃべっているシーンが多いんです」とし、「みんな1回終わったらもう雑談しているのに、自分はずっと台本を読んでいて。家帰っても、移動中もずっと見てみていて、人の何倍もやってやっと同じレベルなんです。セリフを覚えるのは、相当苦しみながらやっているんです」と明かしのだ。 遠藤が“努力型”ということを初めて知った日だった。同時に、なぜか親近感ももった。それは、番組の試写を見ていたからかもしれない。監督は「失敗を笑うのではなく、一生懸命作るのでその姿を見て欲しい」とアピールした。だが遠藤は「俺はばかにされてもいい。ばかにしながら見てください」。そう笑う遠藤にグッと心をつかまれたのだった。【川田和博】