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TinyMLの簡素化に取り組む米スタートアップ

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EE Times Japan

 AI(人工知能)アクセラレータメーカーである米Eta Computeは最近、新型AIセンサー開発ボードに関する詳細を発表した。同社の超低消費電力チップ「ECM3532」を搭載するという。さらに、米Edge Impulseと共同で2020年7月14日に、オンラインワークショップを開催する予定だ。  筆者は最近、TinyML(スマートフォンでも動作可能なほど低消費電力の機械学習)関連の動向について取り上げることが増え、その中でEdge Impulseの名前が頻繁に登場するということに気付いた。TinyMLは、マイコン向けに適合するだけの機械学習アルゴリズムを少量適用するため、規模は小さいが、非常に重要な業界分野とされている。今こそ、このEdge Impulseがどのような企業なのか、そしてその背後には誰が存在しているのかを、明らかにすべきではないだろうか。  Edge Impulseの共同創設者でありCEOを務めるZach Shelby氏は、EE Timesの電話インタビューで、「Edge Impulseは、エッジ機械学習向けにエンドツーエンドの開発プラットフォームを開発した」と説明している。  「ソフトウェア開発において最も重要なのは、コードである。一方、機械学習の分野では、データセットがコードに相当するため、かなり注意深く取り扱う必要がある。ソフトウェア分野には、ソフトウェアアーキテクチャが存在する。コードをアーキテクチャに適用する場合、機能するものを適用したいと考えるのが普通だ。機械学習分野では、アルゴリズムがアーキテクチャのような存在だといえる」(同氏)  Edge Impulseは、このようなプロセス全体を通してエンジニアたちをサポートしたい考えだという。同社のツールは、そのほとんどがデータセットの操作をターゲットとしており、可視化や分析、データセットの移動、データセットへの追加などに対応可能だ。また、さまざまなアルゴリズムライブラリも取りそろえ、それら全てを拡張したりカスタマイズしたりできる。さらに、データをアルゴリズムに適用するプロセスが自動化されている。例えば、アルゴリズムをトレーニングしたり、現在起こっていることを可視化するためのインフラなどが含まれる。また、トレーニングや導入などもサポートされていて、マイコンやローエンドのCPUなどにターゲットを絞った導入が行われている。  Shelby氏は、「Edge Impulseプラットフォームからの標準出力は、C++またはWebAssemblyで行われ、十分な数学機能があれば何にでも構築することが可能なため、現在普及している部品全体の約95%が適用可能だ。Eta Computeの専門性が高いハードウェアもそれに該当する」と述べる。  さらに同氏は、「組み込み開発メーカーとしては、Eta Computeのようなメーカーの部品を使用することは非常に難しいかもしれない。そして機械学習を実行するとなると、さらに困難を極めるだろう。われわれは、そうした課題を取り除こうと、当社製ボードを機能させることが可能な、優れたドラッグアンドドロップバイナリを用意している。直ちにセンサーデータの収集を開始し、当社のシステムに送信することができる」と説明している。 「マイコンは十分に活用されていない資産」  Edge Impulseの共同創業者であるShelby氏とJan Jongboom氏は、ともにArmの出身だ。前身のスタートアップであるSensinodeは、2013年にArmに買収されている。Sensinodeは、低消費電力のメッシュネットワークからインターネットゲートウェイシステムまでのIoT(モノのインターネット)システムを提供しており、Edge Impulseと同様に、組み込み機器から通信インフラまでをカバーするエンドツーエンドのプロバイダーだった。  Shelby氏によれば、Armのマイコンの処理能力が加速度的に向上していくのを目の当たりにしたことが、Edge Impulse誕生のきっかけになったという。  「数年前、1秒間に4000万回の演算を行っていたことに気付いたが、ユーザーは1時間に1回温度データを送信するだけだった。その当時は、マイコンは十分に活用されていない資産だった」(Shelby氏)  これをきっかけにマイコン上で機械学習を動作させるプロジェクトが始まり、最終的にはGoogleの「TensorFlow Micro」プロジェクトに組み込まれることになった。  その後、既存の機械学習ツールを使用するためには、「データサイエンスの専門家、機械学習アルゴリズムの専門家、組み込みの専門家、コンパイラの専門家が一つになっていなければならない」ことに気付き、両氏はTinyML専用のツールチェーンを構築することとなった。  Edge Impulseは、典型的なSaaS(Software as a Service)ビジネスモデルを採用している。大企業の場合はサブスクリプションが必要で、エンジニアチーム間のコラボレーション、大規模なデータセットでの作業、モデルのバージョン管理、セキュリティなどの機能が含まれている。  「われわれの目標は、今後数年間で、同プラットフォームの無償ユーザーを数百万人規模まで拡大することだ」とShelby氏は述べる。  そのためには、開発者やエンジニアだけでなく、マネジャー層に対してもTinyMLで何が可能なのか(画像処理は可能でも、リアルタイムのビデオ処理は難しい、など)を説明する必要があるだろう。さらに、機械学習では、IoTアプリケーションとは異なるデータを必要とすることも理解しておく必要がある。「IoTのデータは、長期間にわたってサンプリングされたデータであるという点で、機械学習とは大きく異なる。そうしたデータは、機械学習に必要なものではない。われわれに必要なのは、高解像度の完全な生データであり、非常に優れた真値(ground truth)を持つ小さなサンプルである」(同氏)  ただShelby氏は、「技術としてのTinyMLは、非常に大きな進歩を遂げた。2019年の時点で商業利用が可能なところまで技術的には完成させたが、業界の方がまだ技術に追い付いていない。一般的な理解が得られていない」と指摘した。 【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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