キリン、倉庫のピッキング作業を自動化--「かしこく・つなぐ」システム三菱重工が開発
キリンビバレッジとキリングループロジスティクスは12月12日、東日本エリアの物流拠点である海老名物流センター(神奈川県海老名市)に飲料倉庫のピッキング作業を自動化・知能化するソリューション「自動ピッキングソリューション」を導入したと発表した。オペレーター不足や大きく重量のある荷物などを取り扱う重筋作業などを最新技術で課題解決に導く。 自動ピッキングソリューションは、三菱重工業が開発し、搬送用ロボットや自動倉庫などの開発、設計などを担う三菱ロジスネクストとともに提供するもの。三菱重工の標準プラットフォームで、機械システムの知能化、最適運用を実現する「ΣSynX(シグマシンクス)」を採用する。 独自に開発した最適化エンジンや統合制御システムを使い、無人フォークリフト(AGF)、無人搬送車(AGV)、製品を自動で整列させてパレット上に積み付けるパレタイザーを効率的に連携させ、搬送・ピッキング回数を削減したとのこと。海老名物流センターでは、AGF4台、AGV11台、パレタイザー1台を30m✕50m程度の自動ピッキングエリア内に導入した。 既に自動ピッキングを採用している物流施設もあるが「コンベアを使っているケースが多く、かなり大掛かりな設備になる。今回導入したのは、AGFとAGVを使い、コンベアなしで実現していることが特徴。加えてΣSynXにより、さまざまな機械とデータを連動し、作業計画を作り、最大のアウトプットにつなげられる」(三菱重工業 執行役員 ドメインCEO 物流・冷熱・ドライブシステムドメイン長の佐々倉正彦氏)と差別化ポイントを挙げる。 今回の導入システム開発は、キリングループが2021年に物流自動化構想を掲げ、三菱重工グループに依頼したのが始まり。三菱重工のメンバーがキリングループの拠点で現地調査をし、作業内容や従業員の動き、荷物の流れなど、細かなデータを取得し、開発を進めたという。 2022年には自動ピッキングシステムの構想を具体化し、三菱重工が持つ共創空間「Yokohama Hardtech Hub」(横浜市)で共同実証を開始。実証実験を経て、2024年9月に海老名への導入に向け着工を開始し、12月の稼働にこぎ着けた。 海老名物流センターでは、有人ピッキング作業エリアの一部に自動ピッキングエリアを設定。通常、このサイズの物流倉庫では15人程度のスタッフがピッキング作業に当たるというが、今回は無人、有人の両方を持っているため、稼働人員は半数程度にとどまる予定だ。 「2024年問題」と呼ばれているように物流倉庫の人手不足は社会課題の一つ。加えて、ピッキング作業は、重量のある荷物を運ぶ重筋作業であることに加え、腰痛につながるなど、安全性の問題もあり、現場の課題に挙がっていたという。 キリンホールディングス 常務執行役員の岩崎昭良氏は「今回、三菱重工グループの方々の協力を得ながら物流課題の中でも大きな人手不足、重筋作業の解決に貢献できたことを非常にうれしく思う。この成果をキリングループのほかの拠点にも展開することで、飲料業界のみならず、持続的な社会貢献を果たしていきたい。今後も三菱重工グループの協力を得ながら、物流の未来を切り開いていきたい」とコメントした。 自動ピッキングソリューションは、飲料のみならず多くの物流倉庫に導入可能としている。今後は、ピッキング作業以外の入出庫やトラック荷積み、荷下ろしなどの自動化にも取り組んでいくとのことだ。