“宙づり議会”濃厚な英国総選挙 独立やEU離脱の火種も
1801年の第1回から数えて55回目の英国総選挙(下院に相当する庶民院、定数650議席)が、投票日である5月7日(日本時間8日)を目前にし、佳境を迎えています。 【写真】「アメリカ二大政党制の岐路」動かない議会に第三政党への期待 上院にあたる貴族院は貴族や聖職者等で構成され非公選制となっているため、下院の選挙が総選挙となります。なお、英国では下院に優越があり、例えば財政法案は、下院が先議権を持ち、貴族院は成立を引き伸ばすことしかできません。また、憲法慣習として首相は下院からなるものとされています。1963年から1964年にかけて首相をつとめたダグラス・ヒューム伯爵は首相就任のために自分一代について爵位を返上し補欠選挙に出馬し、下院議員へ鞍替えしました。 そして1か月間以上におよぶ総選挙の決着がつこうとしています。ただし、その見通しは前回同様「ハングパーラメント(宙づり議会)」となりそうです。
スコットランド国民党が第3党か
2010年の総選挙で英国議会は、単独過半数を獲得する政党のない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となりました。そして保守党と自由民主党の連立によってキャメロン政権が誕生。今回も「ハング・パーラメント」となる見通しとなっています。しかも、前回キャスティングボードを握った自民党の議席が大きく減る見通しにあります。 英国の調査会社「YouGov」によると、政党支持率は次のようになっています。労働党(34%) 保守党(35%) 自由民主党(8%) 英国独立党(12%) 緑の党(5%) その他(6%) 。支持率がそのまま議席獲得数に直結されるわけではありませんが、保守党と自民党を合わせても過半数を超える支持率にはなっていません。 ニッセイ基礎研究所経済研究部の伊藤さゆり上席研究員は議席数を次のように分析しています 「見通しとしては、前回は56議席を獲得した自由民主党が約半数になる可能性が高い。その一方で、小政党では、英国独立党(UKIP)よりも、スコットランドの地域政党であるスコットランド国民党(SNP)に小選挙区制(最多得票者当選制)が有利に働くと思われます」 さらにSNPの獲得議席が域内59議席の大半を奪って第三党に躍進する可能性があります。しかし、スタージョン党首は「保守党政権を排除する」と公言しているため、保守党と組む可能性はほぼないでしょう。しかし、核兵器撤廃などを訴えるSNPとは労働党のミリバンド党首が連立を否定しています。そのため、第三党というポジションが想定されています。 伊藤上席研究員は選挙後の争点は次のように語ります。 「労働党政権がSNPの協力で樹立される場合、スコットランド独立問題という火種を抱えることになります。他方、保守党政権続投の場合には、今回の総選挙に勝利した場合、EU残留の是非を問う国民投票を2017年に実施することを公約しているので国民投票後のEU離脱(Brexit)リスクに目が向きやすくなります」