森永卓郎、岸博幸に感じた「余命の差」が生む余裕、日本経済停滞の「原因」については意見が一致
もう1つは、用語の選択だ。私は財務省のことを「カルト教団」と評したが、岸さんは「軍隊」と評した。実は言っていること自体は大きく違わないのだが、言われる財務省の立場にたってみると、「軍隊」までは許せても、「カルト教団」は許せないだろう。こうした岸さんのトークは、コミュニケーションの技術として活用できるので、読者もぜひ参考にしてほしい。 ■「分配の不平等」こそが、日本経済低迷の原因 そして、岸さんのこうしたバランス感覚こそが、メディアで長生きしようとするときの最大のコツなのだ。もちろん、私もその仕組みは分かっているのだが、残された人生が数カ月になり、息継ぎをする必要がなくなったので、バランスを取るのをやめたのだ。
その結果は、予想どおりというか、予想以上で、私はテレビの報道番組、情報番組からすっかり干されてしまったが、岸さんは活躍を続けている。テレビ局員の立場を考えれば当然だ。いまの森永は危なくて使えないのだ。 ただ、表現の仕方は異なるものの、2人の見方が一致していてうれしかったのは、この30年ほど、日本経済がまったく成長しなくなった原因が分配の不平等にあるという認識だ。 岸さんは、その理由について、大企業が大きな利益をあげ、それを内部留保で貯めこむ一方で、国民は賃金が上がらないうえに、負担増を強いられて、国民が幸せになれない経済・社会構造になってしまったことを挙げた。
そうした構造になったのは、高度経済成長期に形成された大企業と政府の癒着の構造を変えられなかったことが原因だと岸さんは見ている。 もちろんそうなのだが、私は、日本の経済社会が、グローバル資本主義に巻き込まれ、高度経済成長期にうまく機能していた仕組みが続けられなくなったことが背景として存在しているのだと考えている。 その点で、グローバル資本主義に巻き込まれた最大の原因が、この40年間にわたってむしろ強まってきた対米全面服従路線にあるという点についても、岸さんと認識を共有できたと思う。問題は、対米全面服従の源流だ。