出口治明×弘中綾香「知識×考える力がおいしい人生になるのです」お二人の往復書簡を大公開!
出口治明さん×弘中綾香さん【「おいしく」生きるヒント】
これから先、どんな人生を送りたいか。どんな人と出会いたいか。どんな自分でありたいか― ― 。新型コロナウイルス感染症の出現で、誰もが自分自身の今いる場所を見つめ直した2020年。これからの私たちの“生き方”について、明るく力強い提言をくれる本がベストセラーになった。 弘中綾香さんに関する記事はこちら! 『還暦からの底力 歴史 ・ 人 ・ 旅に学ぶ生き方』―― 。アラサー世代にとって、“還暦”なんてまだまだずっと先の話だけれど、本に書かれているのは、年齢の話じゃない。そこにあるのは、好きなことをして、楽しく、心豊かな人生を送るためのヒントの数々。 発売中のwith2月号では、本を読んで感銘を受けた弘中綾香さんが、著者である出口治明さんに働く女子的「おいしい生き方」について聞く大特集を掲載。 今回は、「おいしい人生」を送るための冬期集中講座の始まり、弘中さんと出口先生の往復書簡をご紹介します! ブラウス¥19000、スカート¥24000/JILLSTUART(ジルスチュアート ルミネ新宿店)
おいしい人生=「知識」×「考える力」なのです
「みなさんはおいしいご飯とまずいご飯、どちらを食べたいですか?」これは、僕が講演の時によくする質問です。すると、みなさん口を揃えて、「おいしいご飯」と答えます。 弘中さんも、おいしいものを食べるのがお好きなんですね。 では、「おいしいご飯」とは何かを因数分解してみましょう。いろんな材料を集めて、上手に調理したらおいしいご飯ができます。三つ星シェフでも、ご飯と塩だけでは、そんなにおいしいものは作れない。野菜があったり、魚があったり、肉があったりしたほうが、食卓は豊かになるのです。 次に、「おいしい人生とまずい人生、どちらをおくりたいですか?」と質問します。 当然、みなさんは「おいしい人生をおくりたい」と答えます。では、人生にとっての食材とは何でしょう? それは知識です。でもどんな知識でも使わなければ役に立ちません。知識を上手に組み合わせて、生活に応用していくこと、即ち考える力が必要になる。知識×考える力がおいしい人生になるのです。 僕が子供の頃はまだ食糧が十分ではなく、修学旅行にも配給制のお米を持参しなければいけないような時代でした。当時は、1ヵ月に1回ぐらいしか肉が食べられなかったので、下手に焼こうが肉は肉。どう調理してもおいしかったのです。 でも今は、スーパーに行けば、どんな食材でも手に入る。そうなると、材料以上に、料理する人の腕が“おいしさ”を左右することになります。 食材が簡単に手に入るようになったのは、知識についても同様です。 昔は物事を知っているだけで一生食べられました。明治時代には海外に留学して、西洋の大先生の本を数冊持って帰り、それを翻訳したり、説明したりするだけで、東大教授になれて、一生ご飯が食べられた。 それだけ知識が貴重だったのです。僕が会社勤めをしていた頃は、わからない言葉があると図書室に行って、百科事典を引いていました。ところが今は、大英図書館の全ての書物がオンラインで読めるわけです。 わからないことがあると、すぐにネットで検索ができる現在は、知識を得ることがものすごく簡単になっている。ということは、料理と同じで、それを応用する力、知識を使って、考える力をつけることが大事になってくる。 おいしい人生をおくろうと思ったら、考えなければいけません。自分の頭で、自分の言葉で、自分の意見を。僕は、年齢や性別で人間の可能性の多寡を判断はしませんが、弘中さんのような若い女性には、ぜひ、この変革を求められる社会でもっともっと活躍していただきたいし、同時に、おいしい人生をおくっていただきたい。 「おっさん的価値観」が蔓延する日本社会に、高らかに「NO」を突きつけてください。