コロナ禍で注目、水道いらずの手洗い機「WOSH」 排水量はわずか1%
手を洗いたいけど水道がない……。新型コロナウイルス感染拡大を機に、このように感じたことがある人も多いのではないか。その悩みを解決できるかもしれない新しいアイテムが注目を集めている。 【画像で見る】スマホの除菌できる 2020年12月19、20日。クリスマス前で賑わう東京銀座の歩行者天国に、白いドラム缶型のスタンドが並んだ。水循環型の手洗いスタンド「WOSH」だ。 WOSHは、20リットルの水と電源があれば繰り返し使うことができる手洗いスタンドだ。手をかざすと水が出る非接触の仕組みを採用した。ろ過や塩素添加、紫外線照射の技術を活用した水再生処理装置を搭載し、使った水をWHOの飲料水ガイドラインや各国の飲料水基準に準じたレベルまで再生。衛生的な水で手を洗うことができる。再利用できない水は別のタンクにたまる仕組みで、排水量は約1%で済む。 本体にドラム缶を採用したのは、生産設備を問わず世界中で生産できるようにしたためだ。3Dプリンタを活用した量産も想定しているという。 開発したのは、水処理装置の製造・開発を手掛けるWOTA(ウォータ、東京都文京区)。ウォータは、2014年10月に東京大学大学院生が学生ベンチャーとして設立。19年2月には、AI(人工知能)を活用して排水の98%以上を再利用できる「WOTA BOX」を開発。この装置は、シャワーや手洗いのシーンだけでなく、洗濯機にもつなげて利用できる。被災地においても入浴支援で活躍した。
「店の入り口で手を洗う」新しい日常の風景に
そんな中で起きた新型コロナウイルスの感染拡大。手洗いの重要性が高まる中、何かできないかと開発したのがWOSHだった。ウォータCEOの前田瑶介氏は「アルコール消毒は手洗いの代替ではなく、あくまで補完でしかない」と開発の経緯を語る。 「以前、あるカフェチェーンの社長と『お店の入り口に手洗い場が欲しいよね』という話になり開発を始めた。手洗い場があれば入り口で水際対策ができるし、衛生効果としてもアルコール消毒ではなく手を洗うことがベスト」(前田氏) 店舗入り口での手洗いは、実際に多くの人が必要だと感じているようだ。同社が8月に実施した調査では、98.2%の人が外出先のウイルス対策として手を洗いたいと思うと回答。一方で、手を洗いたいのに洗えない、もしくは洗いづらくて困ったことがあると答えた人は79%に上った。 また、入り口で手を洗いたいと思う施設としては「飲食店」が最も多く83.6%。次いで「病院」(60.0%)、「スーパー」(45.6%)と続いた。多くの人が定期的に訪れ、人や商品などと触れ合う場所での「手洗い需要」が多いことが分かる。 開発にあたりこだわったのは、日常的に使用できるものにすること。この装置を普及させて「新しい日常の風景」になることを目指した。WOSHには、スマートフォンの除菌機能も搭載した。手を洗っている間に手洗い場の横にある穴にスマホを入れると、表面についた菌を99.9%以上を除去できるという。「スマートフォンは『第3の手』とも言われている。どうせならWOSHで全ての“手”をきれいにして欲しい」(前田氏) 7月の発表後、飲食店や商業施設、病院などから問い合わせが相次ぎ、約150カ所での設置が決まった。「入り口で手を洗うという全く新しい習慣だが、場所によっては“しっくり来ている”ようだ。これが次の日常につながれば、設置場所はもっと広がると思う」(前田氏) 新型コロナウイルスの影響でさらに需要が高まることも見込まれていて、同社は2021年末までに日米で約1万台の販売を目指す。将来的には、手洗い設備を持たない地域に住む30億人に提供するのが目標だという。 WOSHが私たちの新しい習慣を作るきっかけになるかもしれない。
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