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『3』に垣間見える悪玉っぷりに思うキリンジのロックバンドとしての肝

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歌詞に見るロックなスタンス

キリンジをロックバンドとして認定する要素は、その歌詞にもあると思う。これはこの時期だけのことなのかもしれないが、彼らの歌詞はどれもこれもはっきりと意味が分かるようなものではないためか、リスナーの間では謎解きみたいなことも横行しているようだ。今回、本稿作成のためにキリンジのことをネットで調べていたら、特に代表曲であるM6「エイリアンズ」は様々な解釈があることが分かった。中にはほとんど論争みたいになっているサイトも見かけた。ここではそれら論説は取り上げないけれども、(おそらく)作者にははっきりとした歌詞のモチーフがありつつも、リスナーがそれぞれに解釈する余地があるその作風は、実に豊穣なものであると言わざるを得ない。キリンジの歌詞は文学的とも言われているようだが、その余白、行間が読める感じこそが文学的なのだろう。で、歌詞がロックな件である。気になったフレーズを以下に記す。 《地下鉄は袋小路で終点 真夜中のつぶやきは/フレーズだけが鋭ってはトンネルを削り/爪が痩せてく》(M1「グッデイ・グッバイ」)。 《勝つことを許されない二流で無名の悪玉(ヒール)》(M5「悪玉」)。 《まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実 ほおばっては/月の裏を夢みて/キミが好きだよ エイリアン/この星のこの僻地で/魔法をかけてみせるさ いいかい》《踊ろうよ さぁ ダーリン ラストダンスを/暗いニュースが日の出とともに町に降る前に》(M6「エイリアンズ」)。 《今日も持て余す僕の/脹らみ過ぎた好奇心にバクも消えた》(M8「むすんでひらいて」) 《旅の途中で僕らはみんな迷子になって/"夢の島"まであとどのくらい?/街はタールの闇におおわれて 誘蛾灯をたよりに》(M9「君の胸に抱かれたい」)。 《白い煙を吐いて 魔を刺すホクロの罠/噂の悪魔のまつ毛 胸騒ぎ荒れる/誘蛾灯 濡れたネオン 蔦の腐った"エデン"/導火線 飛びちって炎 十字架が燃えた》(M10「あの世で罰を受けるほど」)。 《砂漠に水を蒔くなんておかしな男さ/「ごらん、神々を祭りあげた歌も、貶める言葉も今は尽きた。」/千年紀末の雪に独り語ちた》(M13「千年紀末に降る雪は」)。 《袋小路で終点》だの《月の裏》だの《僻地》だの、あるいは《十字架が燃えた》り、《砂漠に水を蒔》いたり、とにかく閉塞感に苛まれたワードが並んでいる。こうしたネガティブなキーワードも中二的な意味合いでロックと呼ぶこともできるが(個人的にはその「Anarchy in the U.K.」的粗暴さは好物だが)、肝心なのは、だからと言って“No Future!”と叫んでいるわけじゃないところだろう。ネガティブなワードは現状の揶揄であり、多くの箇所でそれを打破せんとする姿勢が垣間見える。分かりやすいのは、M5「悪玉」の《振り切れ、今こそ俺は自由》《「マイクよこせ、早く!」》や、M9「君の胸に抱かれたい」の《水をかぶろう 裸になるよ》だろうか。M6「エイリアンズ」にしても《魔法をかけてみせるさ》と歌っている。勇ましさが感じられるところである。『3』のジャケ写がその印象をより強くしていると思う。個人的には凛々しいふたりの表情にそれを感じるし、彼らが濡れているのは、文字通り《水をかぶ》ったからなのではないかと推測するが──。 TEXT:帆苅智之

OKMusic編集部

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