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松任谷由実×あいみょん、ソングライティングの共通点は“第六感”を描いた歌詞に? 『ANN GOLD』のトークから考察

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リアルサウンド

 5月22日、松任谷由実がパーソナリティを務めるラジオ『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』(ニッポン放送)にあいみょんがゲストとして出演。電話越しでの対面となったが、約30分に渡り、二人のプライベートでの関わりや感性の共通点などがよく分かる濃密なトークが展開された。  二人の出会いは遡ること2018年、大晦日に放送された『第69回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の当日。5thシングル『マリーゴールド』がヒットを収め、瞬く間にトップアーティストの仲間入りを果たした紅白初出場のあいみょんは、あらゆる女性シンガーソングライターたちの原点ともいえる松任谷と対面した。あいみょんが囲み取材でも“会いたい人”として松任谷の名前を挙げていたことから、ラジオの番組スタッフがあいみょんのゲスト出演を企画。2019年3月22日の放送で、2人のラジオ初共演が実現に。トーク力のある松任谷があいみょんをリードし、芸歴や年の差を感じさせることのない和やかな会話が繰り広げられた。  約一年ぶりのラジオ共演となった今回。視聴者からのメールテーマは「世代間ギャップ」だったにもかかわらず、プライベートでも親交を深めてきた二人はすっかり打ち解けていた。前回の放送で互いに食器好きだということが判明し、二人はお皿をプレゼントしあったという。なんと、最初にプレゼントしたのは松任谷の方から。高知の朝市に訪れた際に素敵なお皿を発見し、あいみょんの顔が浮かんだことを明かした。また、あいみょんがプレゼントしたくちびる型の箸置きはお揃いとのことだ。このエピソードだけでも二人の親しさが伺えるが、自宅栽培の話題になった時には「あいみょんちゃんのことだから、鉢にもこだわってそう」という松任谷の発言に、あいみょんが「さすが!わかってますね(笑)」と応えるなど、互いの感性を信頼しているように思えた。  今回特に印象的だったのは、「生まれ変わったらなりたいもの」について語っていた場面。松任谷は「ブナの木になりたい」と回答していたのだが、驚いたのはそのブナの木の下で、森林浴をした時の情緒的な描写だ。 「ブナの林って明るいの。葉っぱが薄くて、太陽があたって葉脈が見えるくらいに透けて、森が緑色になるわけ。木に耳をあてると、水の音がするの」  ブナの木が生えた林の色彩や木に耳が触れ、聞こえてきた命の鼓動。エピソードを聞くだけで、生々しいほどにその様子が浮かぶ。この研ぎ澄まされた感性は彼女の歌詞にも反映されていて、「翳りゆく部屋」の〈ランプを灯せば街は沈み/窓には部屋が映る/冷たい壁に耳をあてて/靴音を追いかけた〉、「青春のリグレット」の〈バスは煙り残し/小さく咳きこんだら/目の前が滲んだ黄昏〉など、心情よりも情景を細かく描いているのが印象だ。  それは、あいみょんのソングライティングにも共通しているように思える。例えば、あまりも有名な「マリーゴールド」の〈麦わらの帽子の君が/揺れたマリーゴールドに似てる〉というワンフレーズ。実際に自分が体験したわけでもないのに、その一文だけで雲ひとつない夏の青空や、“麦わらの帽子の君”に対する愛しさで胸が痛まないだろうか。現在『淡麗グリーンラベル』のCMで弾き語りバージョンが話題になっている「ハレノヒ」に関しても、〈北千住駅をフワッと歩く/藍色のスカート/いつになく遠く遠くに見える/加速する足音〉という視覚的な描写が盛り込まれ、ストーリー性に富んでいる。  これは以前にインタビューであいみょんが、「『マリーゴールド』を作る時に、麦わら帽子の女の子の後ろ姿が、揺れたマリーゴールドに似てるなっていうイメージが頭に浮かんだんです。その瞬間っていうのは、どこからの情報でもないんですよ。味覚でもないし、触感でもない。それって第六感としか思えなくて」(参照:https://realsound.jp/2019/02/post-318932.html)と表現したように、シックスセンス=第六感からくるものではないだろうか。瞬間的に心に残る情景。特に二人はその感覚に優れているようで、松任谷はあいみょんと初めて出会った時のことを会話の内容ではなく、まず「赤いオーバーオールを着ていた」と振り返っていた。  番組の終盤、松任谷があいみょんが好きだというジブリ作品『魔女の宅急便』に出てくる、カラスと共に暮らす画家の少女(ウルスラ)に自分たちが似ていると語る場面があった。どのあたりに共感を得たのかまでは説明されなかったが、「重なるところがある気がする」という松任谷の感覚は理解できる。突然魔法が使えなくなり、空を飛べなくなったキキに「(自分が絵を描けなくなったら)描くのをやめる。散歩したり、景色を見たり、昼寝したり、何もしない!そのうち急に描きたくなるんだよ」とアドバイスしていたウルスラ。彼女もやはり、日常の中で出現する第六感を大事にしている人物だからではないだろうか。  この日、あいみょんがリクエストした曲は、松任谷が1977年にリリースした「潮風にちぎれて」。自身がパーソナリティを務めるラジオでも度々かけていたという同楽曲について、あいみょんは「強がりな女の子の切なくて、可愛らしい歌詞に惹かれてしまって、最後の歌詞にやられちゃったんですよね」と思いを明かした。 〈吹きすさぶ潮風に/わたしは まぶた閉じていた/あなたと来なくたって/わたしはもとから この海が好き〉  第六感から浮かんだ情景から感情を表現し、聴く人の心を揺さぶるシンガーソングライターの松任谷由実とあいみょん。二人が互いの感性に影響を与えた結果、これから新たに生まれてくる音楽に注目したい。

苫とり子

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