【17世紀の哲学者が解説】意見が対立したときに「他人の欠点ばかり指摘する人」は幸せになれない理由
人は誰もが「自分が正しい」という信念を持って生きている。しかし、多種多様な「正しい」が集まる現代社会においては、時に意見が一致せず対立状態に陥ったり、意見が合わない他者をあからさまに排除したりもすることも……。他人のアラを探して自分の意見を押し通さねばという衝動に駆られたり、また逆に他人の言葉を鵜呑みにしそうになったりしたら、まずはひと呼吸置くことが肝心だ。※本稿は、バルタザール・グラシアン著、齋藤慎子訳『バルタザール・グラシアンの賢人の知恵 エッセンシャル版 クラシックカバー』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 真実を見抜く知恵1 相手の立場で考える 人はそれぞれ自分が正しいと思うことに基づいた立場をとり、自分の信念をさまざまな方法で正当化する。 ある問題で2人の意見が対立したとき、それぞれが正しいのは自分だと信じているが、道理に二面性はありえない。相手の見解を批判するときは用心して、反論は控えめにしよう。相手の立場に立ってみて、相手の意見を理解するよう努めるのだ。 相手の立場から問題を検討してみれば、相手を完全に非難することも、こちらの根拠を全面的に擁護することも難しいことがわかるものだ。相手の立場でしばらく考えよう。 ● 真実を見抜く知恵2 情報を鵜呑みにしない 人は耳にしたことを信用しがちだが、耳は真実を受け入れにくく、うそを堂々と通してしまう。 真実は目で確かめて理解するもので、人から聞いて理解するものではない。伝聞にはたいてい先入観が混ざっている。時間がたって伝わってくる場合は特にそうだ。人から聞く話は、伝わってくる過程で話し手の感情や意見によってねじ曲げられてくる。 だから用心して褒貶ともに耳を傾けなければいけない。
その情報は誰から伝わったものかによく注意し、その人の立場をあらかじめ知っておくことが重要だ。真偽の判断はよく考えてからにしよう。情報の出所に注意するのだ。 ● 真実を見抜く知恵3 何事も十分に検討する まちがいがないか確認するため、決めたこともすべて見直してみるのが慎重な態度だ。自分の判断に不満を感じる場合は、見直し作業にとりかかろう。当初の判断を軟化、あるいは強化するのだ。再検討しているうちに、自分の価値判断の是非を決めるような新たな情報が出てくるかもしれない。 何か頼みごとをされたときも、よく考えてから判断を下すほうが、結果的にいっそう感謝されるだろう。依頼を断らなければならないという場合でも、痛手を和らげるために先延ばしにしたほうがいい。 また、たとえ緊急で判断をしなくてはならない状況に直面しても、十分に時間をかけてから結論を出そう。あらゆる角度からしっかりと検討すれば、問題点や不備な点が出てくるかもしれないのだから。 ● 真実を見抜く知恵4 良いところを見つける どんなに不快な物事にも良い面はあるものだ。正しい判断力で良いところをすぐに見きわめよう。蜜蜂は甘い蜜にまっすぐに向かい、毒蛇はその苦い毒に酔いしれる。