アシアナ航空の超大型旅客機A380型が成田空港乗り入れ ── その目的と課題は?
日本におけるA380型の運航状況
日本におけるA380型は、2014年6月現在で7社の乗り入れ実績があり、そのうち同月現在でも定期的に乗り入れている便はシンガポール航空とタイ国際航空の2社となっています。 A380型のローンチカスタマーとなったシンガポール航空は、2008年5月から成田空港への乗り入れを開始しています。現在は同社のハブ空港のシンガポール・チャンギ空港から成田空港を経由する形でロサンゼルス国際空港を結ぶ路線を定期運航している他、繁忙期には関西国際空港や中部国際空港への便で運航される場合もあります。 タイ国際航空は2013年1月から成田空港に乗り入れを開始し、バンコクまでを定期運航しています。また、2013年12月には関西国際空港では初となるA380の定期便としてバンコク線に投入されています。 日本におけるA380型の運航は主に東南アジア方面が中心になる一方、中東やヨーロッパ方面の便で運行されていたA380型については、羽田空港の国際線発着枠が順次拡張されるにつれ、各社とも羽田へ重点を置き始めた結果、成田便のダウンサイジングによる撤退が続いています。 エールフランスは今年3月、羽田空港からパリまでの路線に朝夜2往復分の枠を確保し、それぞれボーイング777型機を使って運行していますが、それに伴い5月に成田便の需要調整を行い、A380型をボーイング777型機に機材変更しています。
A380型機運航に必要な条件とは?
A380型機は超大型機故に、運航にあたっては空港や航路上に様々な条件が整う必要があります。 空港の設備については、滑走路や誘導路の幅や間隔、ターミナルのボーディングブリッジや地上電源装置についても超大型機のA380型機は従来機とは違った基準が求められています。そのため、国際民間航空機関(ICAO)はA380型級の大型機就航のための仕様を定めた飛行場等級「コードF」を定めています。 日本では定期便が就航している成田空港や関西国際空港の他、羽田空港や新千歳空港、中部国際空港での運用が可能とされています。 A380型を受け入れるにあたってもう一つ問題になるポイントが後方乱気流です。後方乱気流とは、航空機の翼後方に出来る渦状の乱気流のことで、この中に他の航空機が入ると機体の安定を保つことが困難となり、最悪の場合墜落に至るケースもあります。 A380型はこの後方乱気流の影響が他の機体に比べて大きく、A380の後方を飛行する場合は従来機に比べて広く間隔を取る必要があります。これは羽田空港のような混雑空港では管制上問題となり、国土交通省が日中時間 帯(6:00-23:00)の羽田空港へA380型の就航を認めていないのは、この後方乱気流が原因とされています。 しかし、海外エアラインのA380型による羽田空港就航への要望は強く、5月に成田線からA380型を引き上げたエールフランスも、可能になり次第羽田への乗り入れを実現したいとしています。また、国内エアラインでもスカイマークが国際線参入にあたってA380型を発注しており、2014年末~2015年からの運行開始を予定しているなど、超大型機へのニーズは日々高まっています。 東京五輪へ向けて政府が行なっているインバウンド増加施策や羽田空港のハブ空港化施策に向けて、超大型機の運航問題は避けて通れない問題となりつつあります。