ミズノから3Dプリンターで作る究極のフィッティングシューズ 30年に年間販売1万足へ
「シューズの機能で最も重視されるのがフィット感で、最適なフィット感を得るためには全体重を受け止めるソール部分が足にきちんとあっていることが非常に重要になる。ところが、従来の製造工程では、千差万別の個人の足に合わせてソールを簡単に変えられないという技術的な制約があった」と、「スリーディーユーフィット」を開発したグローバル研究開発部の佐藤夏樹部長は説明する。
通常、ソール部分の製造には平均的な足のデータを元に作った金型が使われる。同じ品質のものを大量に効率よく生産するために金型の技術が発明されたが、100年以上経ったいまでも、大量生産に金型技術は欠かせない。ただ、金型生産は手間もコストもかかり、一人一人に合うソールの生産には向いていない。
「金型から3Dプリンターへ。ソールから足に合わせていくという新しい発想で開発した。ミズノは、カーボンやチタンをゴルフクラブに採用したり、シューズのソールの中にプレートを挟み込んだり、非常識といわれたことにチャレンジして業界の常識に変えてきた歴史がある。このシューズも常識を打ち破ろうというチャレンジと位置付けている」(佐藤部長)。3Dプリンターを用いて一体ソールを作る技術の完成と、計測データに基づいて個人専用シューズを作る設計フローの完成というふたつの技術的なブレイクスルーが、商品化に向けての課題を解決したという。
オーダーから2週間で完成
「スリーディーユーフィット」の販売は、東京・小川町の「ミズノ トウキョウ」で完全予約制で行われる。足型測定と専門家による診断を行い、個人の悩みや癖、好みなども加味したうえでソールを設計。その設計データをミズノテクニクス山崎ランバード工場(兵庫)に転送し、シューズが作られる。オーダーから約2週間で完成する。アッパーカラーはホワイト、ブラックの2色でソールはデザインが異なる2種類。価格は税込5万5000円。
当初は2台の3Dプリンターで対応し、初年度は月産10~20足からスタート。徐々に生産能力を拡大し、2030年には年間販売足数1万足をめざす。「個人向けのウォーキングシューズとしてデビューするが、今後はランニングシューズなどカテゴリーの壁を越えて展開していきたい」(藤原部長)としている。