ステアリングレースを取り外す際はベアリングセパレーターを流用しよう
ステアリングステムベアリングのコンディションによって、バイクの操縦性は大きく影響されます。レースに打痕があればボールやローラーが引っ掛かるため交換が必要です。フレームのヘッドパイプとステアリングステムレースの交換には圧入されたレースの取り外し作業があり、ボルトやナットを緩めるのとは異なるコツや工具が必要です。ここではステムシャフト下部に圧入されたレースを取り外す際に便利なベアリングセパレーターを紹介します。 【画像】メンテナンスの詳しい工程をギャラリーで見る(6枚) 文/Webikeプラス 栗田晃
シャフトに圧入されたベアリングを引き抜く専用工具
ホイールベアリングやミッションベアリングなど、バイクの各部には「圧入」によって固定された部品があります。ボルトやナットで固定された部品は、それらを外せば取り外すことができますが、圧入された部品を取り外すにはある程度の力が必要です。 ベアリングやギヤなどを交換する際のプーラーは、考えようによっては「力任せ」な工具です。簡単に抜けないように圧入=たたき込まれた部品を取り外すには、優しく撫でるだけでは立ち向かえないのです。 一般的にギヤプーラーと呼ばれる工具は、軸に圧入されたギヤやプーリーの外側に2本あるいは3本の爪を引っかけて、軸に押しつけたセンターボルトをねじ込むことで爪を引き上げてギヤを抜き取ります。 逆に、ホイールベアリングのように穴に圧入されたベアリングを引き抜く場合は、内輪に軸を押しつけて引き上げるパイロットベアリングプーラーを使用します。ベアリングが圧入された穴が貫通している場合は、引き上げるのでなく押し抜くこともできます。 いずれにしても、圧入は簡単に外れないことを目的として使われている手法なので、力がしっかり伝わるがっちりした工具が用いられます。 そんなプーラーの一種として活用されているのが、ベアリングセパレーター(ギヤセパレーター)です。これは軸に圧入されたベアリングやギヤを抜き取る際に使用する専用工具ですが、爪タイプのギヤプーラーとは形状が異なります。 爪タイプのプーラーは爪部分だけがピンポイントでギヤに掛かりますが、セパレーターは円弧状のセパレーターブレードが広範囲でギヤと接触します。ブレードの端部はテーパー状の薄い刃で、爪タイプより狭い隙間にも食い込むことができるのが特徴です。 また、セパレーターブレードとセンターボルトをつなぐ2本のロッドは別々の部品で組み立てて使用する点も、爪タイプのギヤプーラーとの相違点となります。 そして2枚のセパレーターブレードがベアリングやギヤを挟み込むベアリングセパレーターは、ステアリングステムベアリング交換でも活躍するのです。